研究課題
難治性炎症性腸疾患は、「腸管上皮バリアの破綻」を主徴とし、腸管内から腸粘膜へ抗原物質が非特異的に流入することにより、粘膜免疫を常時活性化させてしまう未だ原因不明の難病である。本申請課題では、腸管上皮のバリア機能を担うclaudin(CLDN)、およびバリア機能制御に関わるMyosin light-chain kinase (MLCK)に着目し、これらの分子を制御する「CLDNバリア強化分子」および「MLCK活性抑制分子」を開発することで、「腸管上皮バリアの機能回復」というこれまでにない治療法を検証することにより、新たな難治性炎症性腸疾患治療戦略の構築を試みる。腸管上皮細胞が形成するtight junction (TJ)バリアを制御可能なCLDN modulatorを取得するため、独自に開発したCLDN-4レポーターシステムにより新たなCLDN modulatorとしてdaunorubicinとrebeccamycinを同定した。本研究では、daunorubicinとrebeccamycinが以下のメカニズムにより腸管上皮細胞のTJバリア機能を強化することを明らかにした。DaunorubicinとrebeccamycinはDNA damageのセンサー分子であるATM/ATR kinaseを活性化した後、下流分子であるChk1が活性化される。このChk1は何らかの作用によりバリア機能強化分子であるCLDN-5の発現を誘導し、このCLDN-5がTJへ移行することでバリア機能が上昇したのではないかと考えられる。また、rebeccamycinはMLCK活性を抑制することで、炎症性サイトカインによるTJバリア減弱作用を抑えることも明らかにした。さらに、CLDN-2のレポーターシステムを構築し、化合物ライブラリーからCLDN-2 modulatorのスクリーニングを行った結果、複数の新規CLDN-2 modulatorの同定に成功した。今後は、CLDN-2, CLDN-4, CLDN-5 modulatorによる複合的なCLDNバリア制御により難治性炎症性腸疾患による「腸管上皮バリアの破綻」を緩和できるかどうか検討していく予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)
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