本研究では脱塩基部位 (APサイト) に特異的に結合および切断する分子のAPサイト検出プローブおよび抗がん剤の作用増強剤への応用について検討した。 平成28年度には、親和性向上を目的として新規合成した4.4-トリアミンを有するグアニンリガンドについて融解温度測定を行い、安定なAPサイトアナログに対する親和性の評価を行った。また、APサイトに対する切断能についてもゲル電気泳動を行い評価を行った。本新規リガンドはシトシンに対して高い親和性を持つものの、切断活性に関しては従来の3.3-トリアミンを持つグアニンリガンドよりも低い結果となった。これらの結果をふまえ、親和性向上および切断活性向上の新たなアプローチとして、リガンドと標的ODNとの共有結合形成を狙った新規チオグアニンリガンドの設計も行った。 平成28年度に設計・合成を行った新規リガンドの融解温度測定、ゲル電気泳動を通して、ポリアミン部の窒素の位置および炭素数が重要な役割を果たすことを明らかにし、APサイト検出プローブおよび抗がん剤の作用増強剤へと展開するにあたり、リガンド構造のより詳細な情報が得られた。平成27年度に行ったA549細胞株に対するアデニン、グアニンリガンド単独およびDNAアルキル化試薬との併用による細胞生存率の比較から、併用によりわずかながらDNAアルキル化試薬の細胞毒性効果を増強させる事に成功しており、がん細胞パネル評価からより適した細胞株についての情報も得ている。本研究を通じで得られた成果は今後のリガンドの最適化および細胞実験において重要な情報となりえる。
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