研究課題/領域番号 |
26860085
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
正田 卓司 国立医薬品食品衛生研究所, 有機化学部, 主任研究官 (60435708)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乳がん治療薬 / 選択的エストロゲン受容体分解誘導剤 / タモキシフェン |
研究実績の概要 |
エストロゲン受容体(Estrogen Receptor,ER)は全乳がんのおよそ70%で過剰発現しているタンパク質であり,ER陽性乳がん治療薬としてERアンタゴニストが有効である.代表的なERアンタゴニストであるタモキシフェンは,組織依存的なアゴニスト活性を示すことから,投薬には副作用のリスクを伴う.本研究では,タモキシフェンの副作用を減弱させ,かつ,より強力な乳がん治療薬を創製するため,ERに結合してその作用を抑制するだけでなく,ERそのものを分解する化合物を開発することを目的としている. タモキシフェンの活性代謝物である4-OHTとERリガンド結合部位のX線結晶構造解析の結果に基づいて,新規化合物のデザイン合成を行った.合成した化合物の中で長鎖アルキル基を有する化合物にER分解誘導活性があることを見出した.また,その最適な長さが炭素鎖10であること(C10),さらにそのアルキル基の末端にF基を有する化合物(C10F)がより強いER分解誘導活性を示すことを明らかとした.さらに,本化合物のER分解作用のメカニズムを考察するためにコンピューターシミュレーションを行ったところ,ER表面の疎水性アミノ酸で形成される疎水性領域にアルキル基が相互作用し,H12およびコアクチベーターの相互作用を阻害していることが示唆された.以上のことから,この疎水性領域に相互作用しうる化合物をデザインすることがER分解誘導活性を有する化合物を開発するのに有効であることを明らかとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タモキシフェンのアミノ基に導入した長鎖アルキル基のうち,炭素鎖が10の化合物(C10)のER分解誘導活性が高いことを明らかにした.その末端にF基を導入した化合物がさらに高いER分解誘導活性を有していることを明らかとした.またコンピューターシミュレーションを行い,ER表面の疎水性アミノ酸で形成される疎水性領域にアルキル鎖が相互作用していることが示唆された.また,タモキシフェンとフルベストラントのハイブリッド化合物を合成し,その各種アッセイを行った.これまでに合成した一連の化合物のER分解分解能とER結合能の関係について検討した.
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究成果をまとめ,学会や学術雑誌で結果を公表する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
期間中に得られた研究成果を発表するための学会参加および論文投稿を予定しており,そのために次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
学会年会費,参加費,英文チェックおよびその他消耗品の購入に充てる.
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