研究課題/領域番号 |
26860088
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
和田 平 日本大学, 薬学部, 助教 (20597398)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | AhR / 脂肪肝 |
研究実績の概要 |
AhRを肝臓特異的に欠損させた(AhR LKO) マウスにおいて観察された高脂肪食誘発性の炎症ならび肝障害を伴った脂肪毒性は、SOCS3発現量減少の影響であると考えられる。そこで、AhR LKOマウスにおけるSOCS3発現量の減少を回復させたマウス(AhR LKO/S3 Tg)を確立する目的で、まず肝臓においてSOCS3を過剰発現するS3 Tgマウスの作製を試みた。アルブミン遺伝子のプロモーター・エンハンサー領域の下流にSOCS3 cDNAを挿入したDNAコンストラクトのマウス受精卵へのマイクロインジェクションをオリエンタル酵母(株)に外部委託した。得られたマウスの尾からゲノムDNAを抽出し、PCR法ならびにサザンブロット法によりSOCS3遺伝子の挿入を選定した。さらに、肝臓におけるSOCS3の過剰発現をRT-qPCR法およびWestern blot法により確認した。現在、得られたS3 TgマウスをAhR LKOマウスと交配させ、AhR LKO/S3 Tgマウスの作製を進めている。また、AhRによるSOCS3遺伝子の転写調節制御メカニズムの解析を行った。その結果、SOCS3遺伝子のプロモーター領域に存在するAhRの結合サイト(XRE)への直接的な結合がEMSAおよびChIP assayにより確認された。またこのXREを含むSOCS3リポーター遺伝子を用いて転写活性を検討したところ、AhR依存的にプロモーター活性の増加が認められた。これらのことから、SOCS3遺伝子が新規のAhR標的遺伝子であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝臓特異的SOCS3トランスジェニックマウスの作製において、一度のマイクロインジェクションにより、肝臓特異的にSOCS3遺伝子が高発現したトランスジェニックマウスを得ることができたこと。また、プロモーター解析により、マウスおよびヒトSOCS3遺伝子のプロモーター領域に存在するAhR結合領域を同定することができたことより、平成26年度に予定していた実験計画はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、高脂肪食を負荷したAhR LKOマウスの脂肪性肝炎発症におけるSOCS3の関与を明らかにする目的で、AhR LKOマウス肝臓中においてSOCS3が回復したAhR LKO/S3 Tgマウスを作製し、高脂肪食負荷による脂肪性肝炎の発症におけるAhRとSOCS3の関与を解析する。また、脂肪性肝炎などの慢性炎症に伴う細胞壊死および修復の繰り返しによる肝実質細胞の障害は、結合組織を増加させ肝線維化を引き起こす。そこで、肝臓AhRのSOCS3発現調節を介した肝線維化発症への影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
トランスジェニックマウスの作製時において、数回のマイクロインジェクションを予想していたけれども、一度目のマイクロインジェクションによって得られたマウスの中からSOCS3遺伝子が高発現したトランスジェニックマウスを獲得することができたことに加え、SOCS3遺伝子のプロモーター解析において、AhRの結合領域が転写開始領域付近に存在し、実験を順調に行うことができたため残金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度で得られたトランスジェニックマウスを用いて作製するAhR LKO/S3 Tgマウスをはじめとした本実験に供するの4種のマウスの交配ならびに動物飼料費・維持費に使用する予定である。
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