研究課題
Aryl hydrocarbon receptor (AhR)は、芳香族炭化水素化合物の受容体であり、薬物代謝制御のみならず生体内の恒常性の維持に重要な役割を担っていることが示唆されている。本研究では肥満に伴う脂肪毒性発現へAhRの関与を肝臓特異的AhR欠損(AhR LKO)マウスを用いて検討を行った。これまでの先行研究および本年度までの研究成果より、高脂肪食下で飼育したAhR LKOマウスの肝臓において大適性の脂肪沈着、炎症細胞の浸潤および重篤な肝障害を伴った脂肪肝炎の発症が認められた。AhR LKOマウスにおける脂肪肝炎発症のメカニズムとして炎症性サイトカイン抑制因子であるSOCS3発現量の低下が示唆された。平成26年度の研究において、SOCS3遺伝子がAhRの新たな標的遺伝子であることを明らかにした、また、肝臓特異的SOCS3トランスジェニック(S3 Tg)マウス系統を確立した。さらに平成27年度には、S3TgマウスをAhR LKOマウスと掛け合わせ、AhR LKO/S3マウスを作製した。そこで高脂肪食負荷したAhR LKOマウスの脂肪肝炎発症へのSOCS3の関与を検討したところ、AhR LKOマウスにおいて観察された大適性の脂肪沈着、炎症細胞の浸潤および重篤な肝障害を伴った脂肪肝炎の発症はSOCS3発現量の回復によりコントロールマウスと同程度にまで抑制された。平成28年度には、AhR LKOマウスにおける脂肪肝炎の発症において、de novo 脂肪酸合成能が増加していたことを明らかにした。また、活性酸素種(ROS)の指標であるMDA量がAhR LKOマウスの肝臓において増加していたことから、活性酸素の増加の関与が示唆された。したがって、肝臓AhRはSOCS3の発現制御を介して高脂肪食誘発性の脂肪毒性発現を制御していることが明らかになった。
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