研究課題
抗がん剤投与による副作用の一つとして味覚異常が報告されており、これは患者の著しいQOLの低下を起こすため問題となっている。しかし、その基本五味に対する影響を含め、その詳細は不明である。そこで今回、大腸癌の治療に使用されている白金系抗がん剤であるoxaliplatinの味覚への影響について詳細に解析した。OxaliplatinをSD系雄性ラットに腹腔内投与した。有郭乳頭の味蕾を含有する舌上皮組織を剥離・摘出し、各種味受容体のmRNA発現レベルをreal-time RT-PCR、タンパク質発現を免疫組織染色法によって評価した。味覚行動は、ラットが味溶液をリックする回数を指標としたbrief access試験により解析した。なお、味物質としてsucroseを用いた。また、味蕾内の味細胞数については免疫組織染色法により検討した。Oxaliplatin投与7日目のラット有郭乳頭において、甘味受容体の一つであるT1R2 mRNAの発現レベルがcontrol群に比べて高かった。免疫組織染色においても、oxaliplatin投与7日目の味蕾でcontrol群と比べてT1R2の免疫活性が強かった。また、brief access 試験においてsucrose溶液では投与3及び7日目にoxaliplatin群でリック回数が減少し、一方で、EC50はoxaliplatin群で有意に増加したことから、甘味反応性の低下が示唆された。また、oxaliplatin投与後3及び7日目における味細胞数は2群間で有意な差はなかった。以上の結果より、oxaliplatin投与はラットの甘味感受性に影響を与え、それは味細胞数の変動ではなく、甘味受容体T1R2の発現変動に少なくとも一部起因すると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
抗がん剤による味覚障害に関与すると考えられる分子として、味受容体の発現レベルの変動が明らかになったため。
今後は、味受容体の発現変動により、なぜ味覚障害が生じるのかについて、分子レベルでの解析を進める予定である。
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