研究課題/領域番号 |
26860092
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 夕紀 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00564981)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乳剤 / トランスポーター / 医療薬学 / 機能性食品成分 / 吸収 / 小腸 |
研究実績の概要 |
本申請研究では、低吸収性を示す機能性食品成分に焦点を当て、それらの消化管における吸収機構に関する検討、さらに乳剤化などの製剤開発・トランスポータを利用した吸収改善のための検討を行うことで、吸収動態特性を考慮した吸収改善理論を確立することを目的として検討を進めている。その成果により、NPC1L1(Niemann-Pick C1 Like-1)の基質であるコレステロール(chol)に関して、蛍光標識化した界面活性剤成分を用いた検討により、cholを含んだミセルの状態で細胞内へ取り込まれるという知見を得た。また、乳剤にcholを加えることで、難水溶性物質であるcoenzyme Q10 (CoQ10)の細胞内取り込み量は有意に改善できることが示された。ことから、NPC1L1を介して脂溶性成分の吸収改善ができる可能性が示された。一方で、その増大分はNPC1L1の阻害剤であるエゼチミブで抑制された。Cholを含まない乳剤においてもエゼチミブでプレインキュベーションすることによりCoQ10の取り込みが有意差は確認されないものの減少傾向にあったことから、CoQ10はNPC1L1の基質である可能性も考えられる。これまでに、CoQ10がNPC1L1の基質であるか否かは、明確にされていないことから、NPC1L1のsiRNA、NPC1L1の過剰発現細胞などを用いて詳細に検討するべきであると考えている。また、同様に、低吸収性を示す水溶性の成分はリポソーム等に封入して同様に吸収改善できる可能性が示された。このことから水溶性成分であるフルオレセインナトリウムを主成分として、cholを膜成分の一部としたリポソーム製剤を調製して、検討を行ったところ、リポソームに封入することで、細胞内の蛍光色素量が増大することが示された。今後は同様に他の物質を用いて、さらに検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究の初年度(平成26年度)では、構成成分の異なる乳剤の物性の把握と最適化と、詳細な消化管吸収機構の解明のための検討を進めてゆくことを目的としていた。コレステロールを含む乳剤粒子の吸収機構は概ね解明されたと考えている。また、それにより低吸収性を示す物質の吸収改善できることが示されたため、初年度の検討事項は概ね達成されたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の検討結果を踏まえて、トランスポータの制御、あるいは乳化に関しては乳剤の物性を制御することにより、基質成分の吸収改善につながるかどうかの確認を行う。トランスポータの寄与が大きい場合は、siRNAによるトランスポータのノックダウン等により、実験動物へ経口投与した場合の血漿中、組織中濃度を測定し、AUC、Cmaxなどの動態学的パラメータを算出することで評価する。また、乳剤の組成を変化させるなど、複数の乳剤を同様に投与し、パラメータを算出することにより、どの乳剤を用いた場合に高い濃度が得られるのかを評価する。これらの知見を考察することで低い吸収率を示す機能性食品成分の吸収改善法を確立する。また、得られた知見は速やかに国際誌等に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度中に全額使用済みであるが、年度末に購入した物品の支払いが本報告書の作成時点で反映されていないため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り、平成26年度中に全て使用済みである。
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