研究課題/領域番号 |
26860095
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
児玉 進 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20621460)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 核内受容体 / 異物応答 / 免疫応答 / シグナル伝達 / 炎症 |
研究実績の概要 |
本年度は、平成26年度に引き続いて培養細胞系を軸に、実験モデルの検討と解析に取り組んだ。前年度、マクロファージ様細胞へ分化させたヒト単球由来細胞株では、複数のヒトPXR活性化物質がLPS刺激に応答した炎症関連遺伝子の発現を抑制することを見出した。そこで、LPS刺激に応答したNF-κBシグナル経路の活性化を調べたところ、処理したヒトPXR活性化物質によってリン酸化レベルが異なることを見出した。次いで、ヒト大腸癌由来細胞株とマウス由来マクロファージ様細胞株を用い、同様にヒト及びマウスPXR活性化物質処理による炎症関連遺伝子発現への効果を検討した。その結果、それぞれの細胞株で、PXR活性化物質の種類及び処理のタイミングに依存して、LPSもしくはTNFα刺激に応答した炎症関連遺伝子発現が抑制される場合とされない場合が確認された。従って、解析に用いた培養細胞系では、①PXRの発現量が少ない、②PXRは個々の活性化物質に依存して異なる作用点で調節作用を示す、或いは、③活性化物質によってはPXR非依存的に作用する、可能性が示唆された。並行して、論文報告に基づき、新たにマウス初代培養肝細胞を用いて、マウスPXR活性化薬処理下におけるLPS及びTNFα刺激に応答した炎症関連遺伝子の発現変動を検討したが、再現性が乏しく、非実質細胞の有無等の培養・処理諸条件を検討する必要性が示唆された。さらに、ヒトPXRを安定発現するヒト大腸癌由来細胞株を作製すると共に、転写制御の解析が進展している複数の炎症関連遺伝子のプロモーター領域を単離してレポータープラスミドを構築した。 今後、ヒトPXR安定発現細胞株やマウス初代培養肝細胞、siRNA遺伝子ノックダウン法を用いた内在性PXRの発現抑制やレポーター解析等の手法を用い、これまでに得た解析結果を基にPXRによる炎症関連遺伝子の発現調節の分子機序を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、最終的な目的であるPXRによる免疫応答調節の分子機序の解明に向けて、引き続いて平成26年度に変更した培養細胞系を軸とする実験モデルの検討と解析に取り組んだ。 ヒト単球由来細胞株に加え、新たにヒト大腸癌由来細胞株、マウス由来マクロファージ細胞株、さらにマウス初代培養肝細胞を用いて、ヒト及びマウスPXR活性化物質をそれぞれ処理した条件での炎症誘発物質の刺激に応答した炎症関連遺伝子の発現変動やNF-κBシグナル経路の活性化状態を解析した。それらの結果より、解析に用いた実験モデルにおいて、内在性PXRの低発現やPXR活性化物質のPXR非依存性の可能性及び培養条件の検討の必要性などの課題が示唆された。そこで、新たにヒトPXRを安定発現するヒト大腸癌由来細胞株の作製やマウス初代培養肝細胞の培養・処理諸条件の検討を実施した。これらとレポーター解析やsiRNA遺伝子ノックダウン法を用いた内在性PXRの発現抑制等の解析手法を組み合わせることにより、これまでに得た解析結果におけるPXRの寄与を明らかにすると共に、PXRによるサイトカインやケモカイン等を含む免疫調節分子の発現調節の分子機序を明らかにできると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を基に、培養細胞系を軸にしてPXRによる免疫応答調節の分子機序の解明を目標に研究を遂行する。 本年度の研究成果より、培養細胞系及びマウス初代培養肝細胞を実験モデルとして用いた場合の解析結果における①PXR機能の寄与についての評価や②再現性の乏しさ等の課題が明らかとなった。そこで次年度は、本年度に新たに作製したヒトPXR安定発現するヒト大腸癌由来細胞株や初代培養肝細胞、siRNA遺伝子ノックダウン法を用いた内在性PXRの発現抑制等の解析手法を取り入れて、これまでに得た解析結果におけるPXR機能の寄与を明らかにすることを重要視しつつ、研究計画に沿い、PXRによるサイトカインやケモカイン等を含む免疫調節分子の発現調節の分子機序の解明を進める予定である。とりわけ、PXRが調節標的とする免疫調節分子の選定を進め、本年度に単離したプロモーター領域についてのレポーター解析等、分子生物学的な手法を用いて①PXRの炎症関連遺伝子の転写調節領域との相互作用の解析を進めると共に、②免疫応答シグナルのPXR機能への影響を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、Con A自己免疫性肝炎モデルマウスで見出したマウスPXR活性化薬PCNの抗炎症作用を実験モデルとする研究を計画していた。平成26年度、PXR欠損マウスを用いた解析結果から、予想に反して、PCNはPXR機能を介さず免疫応答を調節することを見出した。本結果を踏まえて、他の炎症誘発物質を用いた実験モデルの検討を進め、培養細胞系とLPS・TNFα刺激を軸とする研究計画に変更したことに伴い、補助事業期間延長の承認を受けた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、本研究課題の目的達成に向け、研究計画及び推進方策に沿いながら研究費を研究遂行に使用する予定である、その内訳として、細胞実験関連費、レポーター解析関連試薬、qRT-PCR関連試薬及び抗体関連試薬の購入を中心に、また、得られた本研究の成果を学会及び学術雑誌において発表する為に使用する予定である。
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