研究課題/領域番号 |
26860098
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
深見 達基 金沢大学, 薬学系, 准教授 (00532300)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 加水分解酵素 / 薬物毒性 / アセブトロール / シトクロムP450 / 紅斑性狼瘡 |
研究実績の概要 |
β遮断薬であるアセブトロールは高血圧症、狭心症や不整脈の治療に用いられているが、副作用として紅斑性狼瘡(lupus erythematosus)が知られている。副作用発現には代謝物の関与が示唆されていたが、その代謝に関与する酵素は同定されていなかった。アセブトロールの主代謝物はブチリル基がアセチル基に置換したジアセトロールであるが、カルボキシルエステラーゼ2(CES2)による加水分解反応と、それに続くN-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)によるアセチル化反応により生成することを明らかにした。加水分解代謝物アセトロールはアリルアミンの構造を有するため、シトクロムP450(P450)により活性代謝物が生成される可能性が考えられた。N-アセチルシステインと活性代謝物が反応する性質を用いて活性代謝物生成に関与するP450分子種を探索したところ、CYP2C19がアセトロール活性代謝物生成に関与することを明らかにした。マウスにアセブトロールを投与し、lupus erythematosus発症診断の一つである血中抗核抗体を検出したところ、P450誘導薬pregnenolone 16α-carbonitrileとグルタチオン枯渇薬buthionine sulfoximineを共投与した際に抗核抗体が検出された。しかし加水分解酵素阻害薬であるtri-O-tolylphosphate共投与により抗核抗体検出率は低下した。以上より、アセブトロールはCES2とNAT2によりジアセトロールに代謝されるが、中間体であるアセトロールがCYP2C19により代謝を受けることで副作用発症に関与する活性代謝物が生成することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薬物毒性に対する加水分解酵素の関与を明らかにした点で概ね順調に進展していると判断した。当初は新規加水分解酵素の関与を想定していたが、既知の酵素の関与で説明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
真菌症治療薬ケトコナゾールは経口投与時に副作用として肝障害が報告されており、欧州医薬品庁やアメリカ食品医薬品局は経口薬としてのケトコナゾール使用を避けるよう勧告している。ケトコナゾールによる肝障害発症には加水分解反応により生成する代謝物の関与が示唆されているが、代謝に関与する酵素が不明なため実証されていない。医薬品開発において、肝障害発症メカニズムは有用な情報となるため、ケトコナゾール副作用発症メカニズムを加水分解酵素の同定を介して明らかにすることを目的とする。
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