一部の肝消失型薬物は、その血漿中からの消失が腎障害患者において遅延する。この原因として、慢性腎障害患者の血漿中に存在する尿毒素物質による肝輸送体OATP1B1の直接的な阻害と、血漿成分によるOATP1B1発現低下が、ヒト初代培養肝細胞で報告されている。本年度は、尿毒素物質によるOATP1B1の阻害メカニズムの解明を目的とした。複数種類の尿毒素物質がHEK293/OATP1B1細胞におけるestrone-3-sulfateの取り込みを競合的に阻害することが示された。また、一部の尿毒素物質によるOATP1B1の阻害は、不可逆的であった。その阻害効果は、当該尿毒素物質を培養液中から除いても48時間持続した。一方、慢性腎障害患者の血漿成分は、ヒト初代培養肝細胞におけるOATP1B1の発現量を低下させるが、既知の尿毒素物質はOATP1B1の発現量を低下させなかったとことから、その発現量低下は未知の尿毒素成分によるものであることが示唆された。
|