研究課題
関節リウマチ治療における分子標的薬として、初めての経口投与製剤であるトファシチニブは注射による疼痛や頻回の来院によるストレスを軽減できることから、関節リウマチ患者のQOLを向上させる新たな選択肢として期待されている。一方で、ヤヌスキナーゼ阻害という新規の作用機序に起因する未知の副作用など、安全性への懸念が取りざたされており、厳格な適正使用が求められている。一方で、本薬剤の治療効果・副作用に与える患者背景因子に関する情報は不足しており、有効かつ安全な投与設計指針は構築されていない。本研究計画では、トファシチニブの個別化投与指針の構築を目指し、これまでの関節リウマチ分子標的療法の主流であった注射剤では障壁とならなかった経口投与時の消化管吸収に関与するトランスポーターの影響を明らかとすることを目的としている。これまでに、高速液体クロマトグラフ法(UFLC-UV)を用いたトファシチニブの定量法の構築に成功し、トランスポーター発現細胞系を用いた薬物輸送実験を行っている。本年度は、これらの細胞実験の結果から、消化管吸収の障壁となり得るP-糖タンパク質や乳癌耐性タンパク質の基質となることを明らかとした。さらに、実臨床におけるトランスポーターの影響を明らかとするため、本薬剤投与患者を対象とした血中濃度測定及びトランスポーター遺伝子多型解析を開始した。本薬剤の科学的根拠に基づく投与指針の構築は実臨床においても切望されており、臨床に還元しうる成果の結実に向けて研究を進める。
3: やや遅れている
基礎薬物動態学的研究は当初の計画通りに進んでいるが、患者を対象とした臨床薬物動態研究の患者登録がやや遅れている。
対象患者が目標数に達するまでは、基礎研究を重点的に実施し、臨床に還元しうる成果の構築を目指す。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
Journal of Gastroenterology
巻: 50 ページ: 508-519
10.1007/s00535-015-1061-4.
Pharmacology
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