研究課題/領域番号 |
26860102
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
津田 真弘 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 技術職員 (10726813)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 抗体 / 糖鎖 / 癌 / 質量分析 / バイオテクノロジー / 薬物動態 / 翻訳後修飾 |
研究実績の概要 |
抗体医薬品は製造する段階や投与後の血中において糖鎖付加などの翻訳後修飾を受けることで構造の多様性、不均一性を示すが、それらが薬効や薬物動態に与える影響についての情報は不足している。本研究では、飛行時間型質量分析計TOF-MSによるプロテオミクス解析を用いて、抗CD20モノクローナル抗体リツキシマブの糖鎖構造の解析と薬効との相関を製剤および臨床レベルで明らかにすることを目的とする。初年度は、製剤レベルにおける糖鎖構造解析と動物レベルにおける体内動態解析を行い、以下の成果を得た。 1. リツキシマブのフラグメント化を行うことでTOF-MSにおけるリツキシマブ測定系を構築し、リツキシマブ製剤において数種類の糖鎖修飾体が存在することを明らかにした。2. 免疫沈降法により、ラット血液中からリツキシマブを単離精製する方法を確立した。3. ラットを用いたリツキシマブ体内動態解析を行い、ELISA法により血中リツキシマブ濃度を定量した。さらにTOF-MSによって糖鎖修飾体の相対含有率を測定し、経時的変化を確かめた。4. ヒト血液検体を用いたリツキシマブの経時的構造変化の評価に関する実施申請書を作成し、京都大学大学院医学研究科・医学部及び医学部附属病院 医の倫理委員会の承認を得た。 これらの結果は、製剤レベル及び動物レベルにおいてリツキシマブの構造の多様性、不均一性を示すものであり、今後の予定であるヒト血液を用いた臨床研究や薬効との相関研究を行うにあたり、有用な基礎的情報となるものと考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標は、製剤レベルにおけるリツキシマブの糖鎖構造を明らかにし、リツキシマブの薬理作用の一つであるADCC活性測定系を確立することであった。製剤レベルにおける解析では糖鎖修飾体の構造を明らかにするなど、順調に成果を得ることが出来た。ADCC活性の測定系は確立には至っていないが、条件は絞られてきており、まもなく確立できる予定である。また、患者検体を用いる臨床試験の実施計画書は、既に京都大学大学院医学研究科・医学部及び医学部附属病院 医の倫理委員会において承認を受けており、患者検体を収集する段階に入っている。以上より、研究計画はおおむね順調に進んでいると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
ADCC活性測定系を早期に確立し、初年度に得られた糖鎖構造とADCC活性の相関解析を行う。同時並行でリツキシマブ使用患者における血液検体を用いて、糖鎖構造解析および薬物動態解析を行い、生体内における糖鎖構造の変化を評価することで薬物動態や薬効に与える影響について精査する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画よりもリツキシマブの糖鎖構造解析が順調に進み、物品費を低く抑えられたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
抗リツキシマブ抗体の購入費、細胞培養関連経費、消耗品費として昨年度の残額を使用予定である。
|