研究課題
抗体医薬品は製造する段階や投与後の血中において糖鎖付加などの翻訳後修飾を受けることで構造の多様性、不均一性を示すが、それらが薬効や薬物動態に与える影響についての情報は不足している。本研究では、飛行時間型質量分析計TOF-MSによるプロテオミクス解析を用いて、抗CD20モノクローナル抗体リツキシマブの糖鎖構造の解析と薬効との相関を製剤および臨床レベルで明らかにすることを目的とする。最終年度は、ラット血液中での糖鎖構造解析とヒト血液検体を用いた体内動態解析および糖鎖構造解析を行い、以下の成果を得た。1. 前年度に明らかにしたラット体内におけるリツキシマブ糖鎖構造の経時的変化は、血漿中に存在する酵素によって引き起こされることを示した。また、一部の糖鎖構造はリツキシマブのクリアランスに影響することが示された。2.ラット体内における糖鎖構造の経時的変化が薬理活性に与える影響を精査し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性及び補体依存性細胞傷害(CDC)活性には影響しないことを明らかにした。3. ヒト血液検体を用いてリツキシマブ体内動態解析を行い、ELISA法により血中リツキシマブ濃度を定量した。さらにTOF-MSによって糖鎖修飾体の構造解析を行った。これらの結果は、動物およびヒト体内においてリツキシマブの糖鎖構造変化が起こり、薬効や薬物動態に影響を与えうることを示唆するものであり、抗体医薬品の有効性・安全性の向上に有用な情報になるものと考える。
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医療薬学
巻: 2 ページ: 14-22
Ther. Drug Monit.
巻: - ページ: 印刷中
10.1097/FTD.0000000000000291
Jpn. J. Ther. Drug Monit.
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