本研究では、難治性がん細胞に対して抗腫瘍効果を示すハイブリッドペプチドの抗腫瘍効果増強を目的としている。ハイブリッドペプチドとは、がん細胞標的部位と殺細胞部位からなるペプチドで、抗腫瘍効果を示すが血中での安定性が低い。そこでハイブリッドペプチドにポリエチレングリコール(PEG)とデンドリマーを組み合わせ、殺細胞効果や血中での安定性、腫瘍への集積性を向上させ抗腫瘍効果の増強を試みる。 平成26、27年度は主に以下の内容を行った。血中安定性を向上させるため、ハイブリッドペプチド(HP)にPEGを修飾したPEG修飾ハイブリッドペプチド(PEG-HP)を作製した。また、腫瘍部位でPEGがペプチドより切り離されるようにするため、HPとPEGの間に、がん細胞で過剰発現しているマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)で切断されるペプチドをリンカーとして導入した。このPEG-HPのがん細胞に対する殺細胞効果を評価した結果、リンカーを導入したPEG-HPは、リンカーを導入していないPEG-HPよりも効果的に殺細胞効果を示した。また、担がんマウスの尾静脈よりこのPEG-HPを投与したところ、HPと比べ顕著に腫瘍への集積が確認された。 平成28年度は主に以下の内容を行った。デンドリマーは、ハイブリッドペプチド(HP)と結合可能な多数の官能基を持つため、官能基の全てがHPと結合するか検討した。モデル実験としてHPの代わりに同程度の分子量を持つ安価なPEGをデンドリマー表面に修飾した。その結果、官能基が密に存在するため全ての官能基にPEGを導入することは困難であることが分かった。そこで官能基数を減少させるため低世代のデンドリマーを合成した。今後はリンカーを導入したHPやPEGを低世代デンドリマーと組み合わせさらなる検討を行っていく予定である。
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