研究課題
当研究室では分子標的治療薬による皮膚障害の発症メカニズムにSignal Transducer and Activator of Transcription 3 (STAT3)が寄与することをこれまでに報告している。これらの情報を基に分子標的治療薬によるSTAT3の活性低下を阻止する化合物のスクリーニングを行った。スクリーニングはイメージングサイトメトリーを用いてハイスループットに行い、化合物と分子標的治療薬をヒト表皮角化細胞(HaCaT細胞)に同時処置した際のSTAT3の核移行率を定量することで評価した結果、数種類の候補化合物を特定した。プロスタグランジンE1 (PGE1)は、分子標的治療薬であるソラフェニブのHaCaT細胞に対する増殖抑制作用を顕著に軽減させた。また、この現象は、Gsタンパク質共役型受容体-PKAカスケードから刺激を受けたCyclic AMP responsive element binding protein (CREB)を介したSTAT3の活性保護作用に基づく可能性を示唆した。ビタミンC誘導体であるMagnesium ascorbyl phosphate (P-VC-Mg)についても、ソラフェニブの増殖抑制作用を軽減させた。P-VC-MgについてもSTAT3のリン酸化を保護することにより、増殖抑制作用を軽減させる可能性を見出したが、STAT3の保護メカニズムについては分子生物学的な解明に至らなかった。以上より、分子標的治療薬による皮膚障害の発症メカニズムに基づく克服法の候補化合物を複数特定することができた。今後、臨床応用に向けた検討を行うことが必要である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
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