研究実績の概要 |
愛媛大学医学部附属病院歯科口腔外科の協力を得て自主臨床試験「放射線性口内炎治療薬としてのバルプロ酸ナトリウムの安全性に関するオープン試験」を実施した。口腔がん治療として放射線療法あるいは化学放射線療法を受ける患者を対象として2例実施した。概要はバルプロ酸ナトリウム1200mgを1日2回に分けて内服し、血中濃度40μg/mL~120μg/mL(てんかんの有効血中濃度を参照)が維持されるように適宜増減した。副作用の確認としては血液学的検査(赤血球数、白血球数、血小板数、ヘモグロビン)、血液生化学的検査(AST、ALT, γGTP, LDH, 総ビリルビン、ナトリウム、クレアチニン)を行った。結果として、1例はバルプロ酸ナトリウムとの因果関係が不明なせん妄および誤嚥性肺炎を発症したことから放射線治療中断となり、もう1例はバルプロ酸ナトリウムとの因果関係が不明な肝機能上昇(他の被疑薬:ミノサイクリン、アセトアミノフェン)を示したためバルプロ酸ナトリウムの服用を中止した。これらの結果は予測不可能な有害事象ではなかったものの、より安全に投与できる経路として局所投与(含嗽)が望ましいと考え、「放射線性口内炎に対するバルプロ酸ナトリウム含嗽剤の安全性・有効性に関する非対照、オープンラベル第 Ⅰ/Ⅱ 相試験」を実施することとした。実施方法としては1 日 4 回毎食後および放射線照射前にバルプロ酸ナトリウム含嗽を行い、全身への移行がないか血中濃度をモニタリングする。また、全身投与時の副作用に加えて局所での副作用(口腔内刺激感等)がないかどうかも確認する。現在、2名の患者がエントリーされたが、目立った有害事象は無く治療を遂行している。
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