本研究は低体温時における薬物の組織移行性変化の要因を解明することにより、低体温療法中の薬物投与の最適化を行う基盤を構築することを目的としている。 低体温療法時に汎用される鎮静薬であるミダゾラムを評価対象薬物として選択し、低体温時におけるラットでの体内動態を評価した。ミダゾラムの血漿中濃度は体温の低下に伴い上昇したのに対し、作用部位である脳及び代謝臓器である肝臓中のミダゾラム濃度は低体温時においても正常時と同等であり、低体温時においてはミダゾラムの組織移行性が減少することが明らかとなった。組織移行性へと影響する要因の一つである薬物のタンパク結合率を平衡透析膜法により評価したところ、低温時においてミダゾラムの遊離型分率が半減することが明らかとなった。さらに、タンパク結合率や脂溶性などの特性が異なる薬物を用い温度低下がタンパク結合に与える影響を評価したところ、薬物の特性に応じて温度低下の影響が異なることを明らかにした。 また、臓器表面からの薬物局所投与に関する研究や肝炎時における薬物の体内分布変化に関する研究も行い、薬物の吸収性や分布に関する知見が得られた。
|