研究課題/領域番号 |
26860109
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
伊藤 慎悟 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 助教 (20466535)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | オーファントランスポーター / 腫瘍形成 / タンパク質翻訳後修飾 / 細胞増殖 / 肝臓がん |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、申請者の仮説「がん抑制遺伝子でかつオーファントランスポーターであるSLC22A18の機能低下は細胞内代謝調節機構破綻によるシグナル伝達異常によって腫瘍形成を促進させる」の解明である。本年度はヒト肝臓がんモデル細胞であるHEPG2細胞を用いてSLC22A18の腫瘍形成機構への関与を検討した。まず、ヒト肝臓ミクロソームにおけるSLC22A18タンパク質発現をWestern blot法を用いて解析したところ、SLC22A18が35 kDaに検出されたことから、ヒト肝臓にSLC22A18タンパク質が発現することが示唆された。次に、SLC22A18特異的shRNA遺伝子導入によってSLC22A18ノックダウンHEPG2細胞を構築した。この細胞の形態はHEPG2細胞に比べて細長い形をしていた。SLC22A18による細胞増殖への影響を検討したところ、SLC22A18ノックダウンによって細胞増殖速度は減少した。一方、遊離脂肪酸や高グルコース処理によって細胞増殖速度は顕著に増加した。細胞内脂肪滴検出に優れたOil red O染色によって細胞内脂肪蓄積量を検討したところ、SLC22A18ノックダウンHEPG2細胞では細胞内脂肪蓄積量が増加していた。肝臓がん発症過程において脂肪肝から肝炎、肝硬変を得て肝臓がんを引き起こすことが考えられている。そこで、網羅的タンパク質定量解析が可能であるSWATHを用いてSLC22A18発現変動による細胞内タンパク質発現変動を解析した結果、複数のシグナル経路に係わるタンパク質発現変動が明らかになった。以上の結果から、SLC22A18が細胞内タンパク質および代謝物の発現変動によって細胞機能制御に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画のうち、1 . shRNA遺伝子導入によるSLC22A18ノックダウンがん細胞の構築、4. SWATHを用いたSLC22A18タンパク質発現低下による網羅的タンパク質変動解析および5. SLC22A18の細胞内局在解析に関しては検討を行い、成果が得られている。特に、4.の成果から、次年度の研究計画である6. トランスオミクスと局在解析データに基づくSLC22A18によって制御されるシグナル伝達パスウェイの同定とin vitro細胞系における検証のうち、タンパク質発現定量解析からSLC22A18が関与するシグナル伝達パスウェイを解明することを先行して行った。2.メタボロミクスによるSLC22A18発現低下による細胞内代謝産物変動の解析に関しては共同研究計画であり、共同研究先の神戸大学 吉田優先生とともに順調に研究を進めている。3. 免疫沈降法と標的プロテオミクスによるO-GlcNAc化タンパク質の同定と定量解析に関してはHEPG2細胞では検討を行っていないが、他の細胞株において検討しており、準備段階である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は予定通り研究計画を実施し、さらに平成26年度に準備段階にあったメタボロミクス解析とタンパク質のO-GlcNAc化翻訳後修飾解析を行い、SLC22A18が腫瘍形成に関与するメカニズムを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付申請書提出時の旅費の申請額よりも実際に出張等にかかった経費が下回ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の消耗品購入費に充当する。
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