研究課題
がん化学療法誘発性の悪心・嘔吐は、抗がん薬投与により発現する非血液毒性であり、患者のQOLを大きく損なう原因の一つである。近年、ニューロキニン受容体拮抗薬であるアプレピタント及び第2世代のセロトニン受容体拮抗薬であるパロノセトロンが相次いで承認され、日常臨床においてこれらの2剤にデキサメタゾンを加えた世界標準の3剤併用療法が広く実施されるようになってきている。しかし、標準的な予防制吐療法の施行にもかかわらず、すべての患者で嘔吐完全抑制が認められることはなく、悪心・嘔吐のコントロールが不十分である患者が一定数存在する。本研究では、アプレピタントおよびデキサメタゾン併用下でグラニセトロン1 mgに対するパロノセトロン 0.75 mgの優越性を検証する多施設共同ランダム化二重盲検比較試験の臨床データを活用し、上記の大規模臨床試験の参加者から再同意を取得後、制吐薬の中枢への取り込みに影響し、制吐効果の発現に関連することが示唆されているABCB1およびABCG2遺伝子多型と制吐効果との関連を検討した。156名の患者が本臨床研究に登録され、嘔吐完全抑制を達成した患者の割合は全体で55.8%であった。パロノセトロン群においては有意な関連が認められた遺伝子多型を見出すことはできなかった。一方、グラニセトロン群においては、ABCB1 3435C>T(TT: 84.6% vs non-TT: 50.0%, P = 0.022)および2677G>T/A(TT: 88.9% vs non-TT: 51.4%, P = 0.063)においてTT型で高い嘔吐完全抑制割合が得られた。嘔吐完全抑制を目的変数に、2つの遺伝子多型に単変量解析で有意あるいは有意な傾向が認められた性別、シスプラチン投与量の4因子を説明変数とした多変量解析の結果、ABCB1 3435C>T (OR: 6.73; 95 % CI: 1.33–34.08; P = 0.021)、 シスプラチン投与量(OR: 1.09; 95 % CI: 1.01–1.18; P = 0.029) が悪心・嘔吐発現の独立した危険因子となることが明らかとなった。
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Pharmacogenomics J.
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