研究課題/領域番号 |
26860111
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研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
吉田 健太郎 奥羽大学, 薬学部, 助教 (50609899)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 交互累積膜 / 電気刺激応答性 / 機能性高分子 / ミクロカプセル / DDS |
研究実績の概要 |
本研究では、電気刺激応答性を有する機能性高分子を用いて、薬物を内包したミクロカプセルを固定化し、電気刺激によってミクロカプセルの放出可能なデバイスの開発を目的としている。 ミクロカプセルの調製および固定化には交互累積膜法を用いた。交互累積膜法は、操作性が容易あり、特別な機械を必要とせず、用いる物質を自由に選択できる利点がある。交互累積膜で構成されたカプセル膜中にインスリンを含有させることができた。このミクロカプセルと高分子電解質(ポリアリルアミンなど)を基板へ交互に吸着させ、多層膜を調製し、ミクロカプセルの固定化を行うことができた。固定化したミクロカプセルは、酸性では安定、中性にてインスリンの放出を行うことができた(日本薬学会第135回年会にて発表)。次に、ミクロカプセルと電気応答性を示すTEMPO修飾高分子を用いて、交互累積膜を調製した。しかし、TEMPO修飾高分子の電気応答性の低さ、ミクロカプセルの放出機能が不十分であることやミクロカプセルの吸着量が低いなどの問題点が生じた。現在、それを解決するために、①糖鎖や共重合体を用いた「新たなTEMPO修飾高分子の創製」、②「カプセル膜へTEMPO修飾高分子を用いることで、電気化学的応答性を高め、ミクロカプセルの放出機能の向上」を行っている。これらを解決することで、薬物の貯蔵庫であるミクロカプセルの放出を電気化学的に制御することで、電気刺激応答型薬物放出制御システムを構築することができる。また、③「固定化したミクロカプセルの特性の調査」を並行して行うことで、電気刺激による薬物内包ミクロカプセルの放出を制御することで、きめ細やかに薬物の放出を制御できるメディカルデバイスの開発を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交互累積膜法を用いたミクロカプセルと高分子電解質を用いて、基板表面にミクロカプセルで構成された多層膜を作成できた。加えて、インスリンを内包させたミクロカプセルからのpH変化によるインスリンの放出を行うことができた。また、電気刺激応答性を有するTEMPOを修飾した高分子電解質の創製はできたが、以下の2点の理由において達成度が遅れている。 ①ミクロカプセルの固定化量が少ない。 ②固定化したミクロカプセルの電気化学応答による放出が不十分である。 これらは、TEMPO修飾高分子とミクロカプセルの吸着による相互作用が不十分である。TEMPOの量が少ないため、電気化学応答を示す割合が少なく、ミクロカプセルの放出が不十分であったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
電気刺激応答制御可能な次世代薬物放出制御メディカルデバイスの開発の実現のために、今後は、「電気信号によるミクロカプセルの放出制御」に関して重点的に研究を推進する。今後の研究推進方策と対応策として以下3点のことを行う。 ①単純なポリマー鎖(ポリビニルアルコールなど)のみではなく、糖鎖や様々な可能基及び機能性をもつ共重合体へTEMPOを修飾し、最適な電気応答性高分子を創製する。 ②TEMPO修飾高分子を用いたミクロカプセルの調製を行うことで、電気応答によるミクロカプセルの放出機能を向上させる。 ③固定化された薬物の内包量や電気応答による薬物放出挙動について調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遅延のため、電気化学応答を調査するために必要なQCMプローブ、電極の購入が遅延が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
電気化学応答と質量センサを兼ねるEQCM法には、QCMプローブを使用しなければならない。本研究において、主にミクロカプセルの放出及び電気化学応答性を調査するため、QCMプローブは必要不可欠である。また、電気化学及び光学的手法で薬物の放出を調査するためにITO電極の購入にも用いる。
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