平成26年度は、各味に応答する脂質膜センサを用いて医薬品の性質により異なることが考えられる味質の評価と各味質に対する効果的な苦味抑制物質を探索することを目的として実験を行った。塩基性医薬品として、アムロジピンベシル酸塩、ドネペジル塩酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩を、酸性医薬品として、レバミピド、ジクロフェナクナトリウム、エトドラクを用いた。塩基性苦味の基準物質をキニーネ塩酸塩、酸性苦味の基準物質をイソα酸、酸味の基準物質を酒石酸、旨味の基準物質をグルタミン酸ナトリウム、塩味の基準物質を塩化ナトリウム、甘味の基準物質をスクロースとし、各味の基準物質と各医薬品を各々精製水またはPBS (Phosphate buffer saline)に溶解してサンプルとし、脂質膜センサをサンプル溶液中に浸したときの脂質膜とサンプル中味物質との相互作用により得られる脂質膜電位差を、医薬品を口に含んだときの先味の指標とし、脂質膜をサンプルに浸した後、膜洗浄の後に唾液に相当する基準液に浸したときの脂質膜電位差を、医薬品を経口摂取後に口腔内をすすいだ後にも残存する後味の指標とした。また、先味の指標としての電位差を後味の指標としての電位差で除した値を、味物質の脂質膜への吸着率とした。 苦味抑制物質の探索については、コーヒーに含まれる物質であるクロロゲン酸の苦味抑制効果について、味覚センサと分子間相互作用評価により解析を行った。塩基性医薬品の苦味抑制にはクロロゲン酸が有用であることが示唆され、その抑制効果には医薬品とクロロゲン酸の分子間相互作用が関与することが示唆された。今後はクロロゲン酸をはじめ各種苦味抑制物質と医薬品との結合または解離速度定数と苦味抑制効果の関連性について検証し、苦味抑制に有効な物性を明らかにすることを目的として研究を進めていく予定である。
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