研究課題
本研究は、一酸化炭素結合型ヘモグロビン小胞体 (CO-HbV) が輸血後の二次的な全身障害 (細菌感染症、多臓器不全) の予防 (治療) を兼ね備えた革新的な新規蘇生剤としての可能性を評価することを目的とする。しかしながら、CO-HbVの抗菌効果と臓器保護効果を同時に厳密な評価をすることは困難である。そこで、本年度はそれぞれに適した病態モデル動物の作成とCO-HbVの効果を評価した。まず、CO-HbVの抗菌効果を評価するために、臨床状態を良く反映している敗血症モデルマウス (Cecum ligation and punctureモデル) に、HbV (コントロール)またはCO-HbVを投与し (1000 mgHb/kg)、生存率を比較した。その結果、HbV投与群と比較して、CO-HbV投与群において生存率が向上する傾向が確認された。この結果より、CO-HbVは輸血後の二次的な細菌感染症の治療を兼ね備えた新規蘇生剤としての可能性を保持していることが確認された。また、CO-HbVの臓器保護効果を伴う蘇生剤としての有用性を評価するために輸血時に最も発症し、有効な治療法が存在しない輸血関連急性肺傷害 (TRALI) モデルラットの作成を試みた。その結果、洗浄赤血球輸血後6時間において肺浮腫や肺傷害が惹起されるモデルの作成に成功した。一般的に、TRALIは輸血後6時間に発症することが知られており、臨床状態を良く反映したTRALIモデルラットと考えられる。今後はこのモデルを用い、CO-HbVの肺障害保護効果について検討を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
申請段階の研究計画の通りに実験を遂行できているが、CO-HbVの敗血症への有効性評価が生存率にだけにとどまっている。当初申請段階の「血液菌量」と「血液検査」については平成27年度に出血性ショックと敗血症を併発させたモデルにおいて実施予定である。
出血性ショックと敗血症を併発させたモデルに対するCO-HbVの抗菌効果の有効性を評価する。CO-HbVの有効性は、以下の3つの項目で評価する。1.生存率 2.血液菌量 3.血液検査また、CO-HbVの臓器保護効果に関して、平成26年度に作成した輸血関連急性肺傷害 (TRALI) モデルラットを用い評価する。評価項目として、生存率、肺浮腫や肺傷害を評価する。さらに、良好な結果が得られればCOの抗酸化作用・抗炎症作用に焦点を絞り、メカニズムの解明を行う。抗酸化作用の評価は核酸と活性酸素の反応物であり8-ヒドロキシーデオキシグアノシン、活性窒素種の反応物であるニトロチロシンの産生を免疫染色により評価する。一方、抗炎症作用の評価は血中及びBALF中のサイトカインにより評価する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
Biomaterials.
巻: 35 ページ: 6553-62
10.1016/j.biomaterials.2014.04.049.
J Pharm Sci.
巻: 103 ページ: 2199-206
10.1002/jps.24029.
Mol Pharm.
巻: 11 ページ: 4238-48
10.1021/mp500453a.