研究課題
出血性ショック状態を引き起こしたラットに対して、新鮮赤血球、保存赤血球、長期 (1年間) 保存HbVで輸血し、輸血6時間後における臓器 (肝臓、腎臓) の障害度の評価を行った。その結果、肝臓および腎臓の障害マーカーである血清トランスアミナーゼおよびクレアチニンは、すべての蘇生群で軽度の障害を示す値を示したが群間で有意な差はなかった。生化学データの結果を反映して、HE染色による組織学的評価やニトロチロシンの免疫染色による酸化産物の沈着においても蘇生群間で明らかな差は確認されなかった。一方で、出血性ショックモデルラットをCO-HbVで蘇生したところ、HbV投与群と比較してわずかな臓器障害の軽減が確認された。この臓器保護作用は、CO-HbV投与群でニトロチロシンの沈着が減少していた結果から考察すると、COの抗酸化作用に起因していると結論付けられた。加えて、出血性ショックモデルとは異なる多臓器不全を引き起こすモデルとして急性膵炎モデルマウスにおいてCO-HbVの多臓器不全に対する効果を検討したところ、CO-HbVは多臓器 (膵臓、肝臓、腎臓、肺) において劇的な障害の抑制効果を示した。炎症性サイトカインの定量や各臓器における好中球の浸潤、ニトロチロシンの沈着の度合いから総合的に考えて、急性膵炎時におけるCO-HbVの多臓器保護効果は、COの抗酸化・抗炎症作用に起因していると考えられた。以上の結果より、CO-HbVは全身性の抗酸化・抗炎症作用を作用機序とする多臓器不全を抑制する新規薬剤となりうる可能性があると考えられる。
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