研究課題/領域番号 |
26860126
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
串田 良祐 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10707003)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Muse細胞 / 多能性幹細胞 / 間葉系幹細胞 / 胎児付属物 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒト生体由来の多能性幹細胞であるMuse細胞の新規細胞ソースとして胎児付属物の利用可能性の検証を目的として、胎児付属物からのMuse細胞の単離とその特性解析を試みた。本年度は下記の成果を得た。 1) 臍帯組織由来Muse細胞の形態学的特徴と多能性の解析:臍帯組織からexplant法にて間葉系細胞を樹立し、その中にMuse細胞のマーカーであるSSEA-3を発現する細胞が約2%内在することを確認した。臍帯組織由来Muse細胞の細胞表面マーカーをFACS解析すると、成人由来Muse細胞と同様、CD105、CD90などの間葉系マーカーを発現するものの、造血系マーカー、神経堤由来幹細胞マーカー、内皮前駆細胞マーカーの発現は認められなかった。また、この細胞の遺伝子発現解析の結果、Nanog、Oct3/4、Sox2などの多能性幹細胞マーカーを発現することが確認された。この細胞をFACSで単離し、single suspension cultureすると、1細胞からES細胞の胚葉体様の多能性幹細胞マーカーを発現する細胞塊が形成された。この多能性細胞塊は接着培養することで自発的に三胚葉性の細胞へと分化した。これらの結果から、臍帯由来Muse細胞は成人由来Muse細胞同様、多能性を持つことが示唆された。 2) In vitroでの分化誘導:臍帯組織から採取したMuse細胞をサイトカインにより分化誘導することで、神経幹細胞、肝細胞、血管内皮細胞、骨芽細胞、脂肪細胞に誘導できることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、臍帯組織由来のMuse細胞の形態学的特徴と多能性の解析およびin vitroでの分化誘導を検討した。臍帯組織からexplant法にて樹立した間葉系細胞に約2%のMuse細胞が内在することを確認した。臍帯組織由来Muse細胞の細胞表面マーカーは成人由来Muse細胞と同様であり、遺伝子発現解析の結果からNanog、Oct3/4、Sox2などの多能性幹細胞マーカーの発現することが確認された。この細胞をFACSにより単離後、浮遊培養すると、1細胞から多能性幹細胞マーカーを発現する細胞塊が形成された。この多能性細胞塊は接着培養することで自発的に三胚葉性の細胞へと分化することが確認された。さらに、臍帯組織由来Muse細胞は、培養において、神経、肝臓、血管内皮、骨、脂肪に分化誘導できることが確認された。このように臍帯組織由来Muse細胞は成人由来Muse細胞と同様の性質を持つことが確認されたことは大きな成果である。臍帯血、胎盤組織由来のMuse細胞について単離はできているものの、培養条件の設定が十分でないことから、引き続き検討を重ねたい。
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今後の研究の推進方策 |
1)胎児付属物由来Muse細胞の形態学的特徴と多能性の解析: 胎児付属物由来Muse細胞と成人由来Muse細胞の違いについて明らかにするために、透過型電子顕微鏡を用いてミトコンドリア数や微細形態の違いを形態学的に解析する。また、定量PCR、DNAマイクロアレイ、mRNA発現プロファイルなどを用いて、多能性関連遺伝子や細胞周期関連遺伝子の発現の差やその発現パターンを網羅的に解析する。レーザーマイクロダイセクション法を用いて、臍帯、胎盤組織中のMuse細胞を選択的に採取し、多能性関連因子の遺伝子発現を定量PCR、single-cell PCRにより解析する。 2)胎児付属物由来Muse細胞の腫瘍形成能と組織修復能の評価 免疫不全マウスへのMuse細胞の移植による腫瘍形成の有無を形態学的、組織学的に解析する。また、がん関連遺伝子の発現やテロメラーゼ活性の解析を通じて、腫瘍形成能を評価する。胎児付属物由来Muse細胞の組織修復能を評価するために、肝障害モデル動物にGFPラベルしたMuse細胞を尾静脈投与し、細胞の生着、分化について組織学的解析を行い評価する。また機能回復については、マウス末梢血中でのヒトアルブミンの検出により評価する。
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