研究課題
本研究では、ヒト生体由来の多能性幹細胞であるMuse細胞の新規細胞ソースとして胎児付属物の利用可能性の検証を目的として、胎児付属物からのMuse細胞の単離とその特性解析を試みた。まず、臍帯組織からexplant法にて間葉系細胞を樹立し、その中にMuse細胞のマーカーであるSSEA-3を発現する細胞が約2%内在することを確認した。臍帯組織由来Muse細胞の細胞表面マーカーをFACS解析すると、成人由来Muse細胞と同様、CD105などの間葉系マーカーを発現するものの、造血系マーカー、神経堤由来幹細胞マーカー、内皮前駆細胞マーカーの発現は認められなかった。この細胞の遺伝子発現解析の結果、Nanog、Oct3/4、Sox2などの多能性幹細胞マーカーを発現することが確認された。この細胞をFACSで単離し、single suspension cultureすると、1細胞からES細胞の胚葉体様の多能性幹細胞マーカーを発現する細胞塊が形成された。この多能性細胞塊は接着培養することで自発的に三胚葉性の細胞へと分化した。これらの結果から、臍帯由来Muse細胞は成人由来Muse細胞同様、多能性を持つことが示唆された。また、Muse細胞の多能性を機能の指標として自己複製能を持つことが示された。臍帯組織由来Muse細胞を特定のサイトカインにより分化誘導することで、神経幹細胞、肝細胞、血管内皮細胞、骨芽細胞、脂肪細胞に誘導できることが確認された。免疫不全マウスであるSCIDマウスの精巣に臍帯組織由来Muse細胞を移植したが、6ヶ月を経過しても腫瘍形成は確認されなかった。また、TERTの発現は体細胞と同程度の発現であり、腫瘍形成能はないと考えられる。上記の結果より、臍帯組織由来Muse細胞はすでに報告されている成人由来Muse細胞と同等の性質を備えていると考えられる。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Cellular Immunology
巻: 300 ページ: 1-8
10.1016/j.cellimm.2015.10.004
American Journal of Transplantation
巻: 16 ページ: 468-483
10.1111/ajt.13537
Brain Research
巻: 1629 ページ: 318-328
10.1016/j.brainres.2015.10.039
Stem Cells
巻: 34 ページ: 160-173
10.1002/stem.2206
http://www.stemcells.med.tohoku.ac.jp/index.html