研究実績の概要 |
ヒトにおいて先天性心疾患を伴って生まれてくる頻度は1%と高く、その内、心臓流出路・右心室領域に起因する心奇形は30%にも及ぶ。この心臓流出路・右心室領域は心臓背部の前方二次心臓形成領域(anterior Second Heart Field, aSHF)と呼ばれる中胚葉細胞に由来する心臓領域である。これまでにaSHFの発生異常によるヒト先天性心疾患の原因遺伝子としてTbx1などが同定され、またFgf, Bmp, Wntといったシグナリングや、Isl1, Mef2cなどの転写因子がaSHFの細胞増殖や細胞死を制御していることが明らかとなってきている。その一方、心臓発生中にaSHF細胞が流出路・右心室領域へと寄与していく過程において、細胞がどのようなパターン及び極性を持って分裂していくのかは不明のままである。 本研究では蛍光タンパク質を発現するマウスレポーター系統を用いての4Dイメージングを行うことにより、心臓流出路・右心室領域の形成過程におけるaSHFの細胞動態を理解することを目的としている。平成26年度は、蛍光マウスレポーター系統として、組織特異的に細胞核を赤色蛍光タンパク質、mCherryで、細胞膜を緑色蛍光タンパク質、EGFPでラベルできるマウス(R26R-RGマウス、Shioi G et al., 2011)、また、心臓中胚葉特異的に発現するCreマウスとして、Mesp1-Creマウス(Saga Y et al., 1999)の2種の遺伝子改変マウスを用いて、胎生8.5日目胚の4Dイメージングの条件検討を行った。その結果、生存しているマウス胚での心臓中胚葉細胞の蛍光レポーター発現を確認した。また、卵黄嚢を取り除いた状態でのマウス胚の静置培養も短時間では可能であった。
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