研究課題/領域番号 |
26860128
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
甲賀 大輔 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (30467071)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゴルジ装置 / 3D再構築 / 連続切片SEM法 / SEM / 相関顕微鏡観察法 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、1) 走査電子顕微鏡(SEM)による超薄連続切片像の3D再構築法(連続切片走査電顕法)の確立、2) ゴルジ装置の3D再構築像の作製と解析、3)免疫組織化学手技の応用の3項目について検討した。 1) 走査電顕による超薄連続切片像の3D再構築法(連続切片走査電顕法)の確立:本研究では、連続切片SEM法を独自に開発し、ゴルジ装置の高分解能3D構造解析への応用を試みた。連続切片の切削法から、染色、観察に至る全ての工程を検討し、ゴルジ装置の3D構造解析に最適な手法の開発を行った(Koga et al., Microscopy 2016)。その結果、従来の透過・走査電顕技術では観察することが困難であったゴルジ装置の全体像(whole image)を電顕レベルで解析することが可能となった。 2) ゴルジ装置の3D再構築像の解析:本研究では、性腺刺激ホルモン産生細胞、膵臓外分泌細胞、性腺刺激ホルモン産生細胞のゴルジ装置の全体像について詳細に解析することができた。 3)免疫組織化学手技の応用:本研究では、連続切片SEM法に免疫組織化学手技の応用を試みた。現在、LR White樹脂に組織を包埋することで、切片SEM法に免疫組織化学染色の応用が可能となることを証明した(Koga et al., Microscopy 2015)。特に、蛍光-金コロイド標識二次抗体を用いることで、光学顕微鏡像と免疫電顕像との相関顕微鏡観察法も可能となった。今後は、これらの新たな手法を連続切片SEM法に応用し、近い将来、目的分子の局在を加味した3D再構築像の作製が可能となりそうである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、先端的な3Dイメージング技法を駆使して、光学顕微鏡レベルと電子顕微鏡レベルを結びつけたゴルジ装置の3D微細構造解析を行うことを目的としている。平成27年度では、上記の目的を達成するため、① 走査電子顕微鏡(SEM)による超薄連続切片像の3D再構築法(連続切片走査電顕法)の確立、② ゴルジ装置の3D再構築像の作製と解析、③ 免疫組織化学手技の応用、の3項目について順調に計画が遂行されている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、ゴルジ装置の発見以来、100年以上の間その詳細が不明であったゴルジ装置の3D全体形状を、連続切片SEM法により示すことができた。この新たな3Dイメージング技法により、ゴルジ装置の全体形状が細胞種によって多様であることもわかった。今後は、様々な細胞のゴルジ装置を3D再構築し、各細胞のゴルジ装置の形状(特に全体像)の共通性と多様性を、細胞の機能と関連付けて解析する予定である。また、連続切片SEM法と免疫組織化学手技を組み合わせた相関顕微鏡観察法についても発展させていく予定である。この手法を用いることで、ゴルジ装置関連蛋白の局在を3D再構築像に示すことも可能となる。さらに、この手法はゴルジ装置に留まらず、他の小器官の3D構造解析やある分子の局在と微細構造との空間的関係を明確に示す手段として、細胞生物学、医学生物学領域の研究に貢献が期待できる。 さらに、本研究で得られたゴルジ装置の再構築像や、将来的に作製を予定しているゴルジ装置の3D模型は、ゴルジ装置の形態情報ライブラリとして、ウェブ上に展開・公開していく予定であり、多くの研究者がこのライブラリを利用できる環境を整えていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外英文誌に投稿した論文の投稿費と別刷り費用の支払いが、平成27年度内に完了しなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
編成27年度内に投稿費と別刷り代の支払いに使用する。
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