研究課題/領域番号 |
26860131
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 倫毅 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80456649)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脂肪滴 / タンパク質分解 / リポ蛋白質 |
研究実績の概要 |
Huh7細胞を用いた実験により、脂肪滴がタンパク質分解の足場として機能しうることが判明し、肝細胞内で見られるApoB分解において、脂肪滴に局在するUBXD8が主要な役割を担うことを明らかにした。平成26年度の研究では、それらの成果を発展させ、肝特異的UBXD8ノックアウトマウス、およびそのマウスから調製した初代培養肝細胞を用いてUBXD8の生理的機能の解明を行った。 高脂肪食負荷時30週齢マウスにおいて、肝特異的UBXD8ノックアウトマウスでは、野生型マウスから肝臓から脂質を抽出し、TG(トリグリセリド)量およびコレステロール量を測定したが、ともに両マウス間で差はなかった。しかし、組織学的に比較検討をおこなったところ、野生型マウスでは一般的な脂肪肝でみられるような中心静脈域に脂肪沈着が観察されたのに対し、肝特異的UBXD8ノックアウトマウスでは、門脈域に大滴性の脂肪蓄積が見られる特異なタイプの脂肪肝を呈していた。更に、両マウスの血中のリポ蛋白質をゲル濾過HPLCシステムにより解析した結果、肝特異的UBXD8ノックアウトマウスにおいて野生型マウスと比較してVLDL量が減少していることが判明し、肝特異的ノックアウトマウスから単離した初代培養肝細胞の培養上清中のApoB量が減少していることからも、UBXD8がApoB分解を介してVLDL分泌量調節に関与していることが示唆された。 UBXD8については我々の結果以外にも、脂質代謝に関連する幾つかのタンパク質の分解に関与するという報告がある。しかしそれらはいずれも培養細胞に過剰発現させたタンパク質を用いた実験結果に基づくものであり、UBXD8の生理的機能の解析を行う条件として十分とは言えない。この点でマウス個体および初代培養細胞を研究材料とし、肝臓におけるUBXD8の生理機能を見出したことは高い重要性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究計画の最大の目的である肝特異的ノックアウトマウスの生理的意義の解明を終え、論文発表することができた。当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
肝特異的UBXD8ノックアウトマウスでも肝癌由来培養細胞株と同様にVLDL分泌異常が起きることが明らかになった。UBXD8の欠損がVLDL分泌異常を起こすメカニズムをさらに詳細に解明するために以下の実験を計画している。 (1): UBXD8が分解に関わるタンパク質の中には脂質代謝に関与する分子が含まれる。UBXD8の欠損が肝臓における脂質組成を変化させ、それがVLDL分泌の異常をもたらしている可能性がある。この点を検証するためUBXD8欠損細胞と正常対照細胞のリピドミックス解析を行う。 (2): UBXD8欠損肝細胞では脂肪滴と小胞体が融合した特異的な構造(ApoB-crescent)が増加するほか、脂肪滴からVLDLへの脂質供給に異常が見られる。脂肪滴に貯蔵された脂質供給の異常という点に着目し、クラミジア感染細胞を材料として検索する。クラミジアは自身の増殖のために宿主細胞の脂肪滴を利用することが知られており、脂肪滴に貯蔵された脂質の供給異常の本体を探求するためのユニークな材料になり得ると考えている。
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