研究実績の概要 |
エンドサイトーシスの進行には多数のタンパク質が時空間的に秩序立って働く必要があり、ホスホイノシチドの適切な産生と代謝がタンパク質の膜動員と機能制御に極めて重要である。しかし各々のホスホイノシチドの詳細な分布はほとんど明らかでない。そこで本研究では、急速凍結・凍結割断レプリカ標識法(QF-FRL)を基盤技術としてエンドサイトーシスの進展過程でのホスホイノシチド分布を解明することを目指した。 まずリガンドの添加によって膜タンパク質のエンドサイトーシスを同調的に誘導し、ホスホイノシチド分布の経時的変化を追跡することを企図した。蛍光観察レベルでは同調的な誘導を確認できたが、QF-FRLでは標的タンパク質を感度よく検出することができなかった。そこで種々のエンドソームマーカーと脂質プローブの二重標識によってホスホイノシチドの分布解明に取り組んだ。 研究開始時点ではQF-FRLで解析可能なホスホイノシチドはPI(4,5)P2とPI(3)Pのみに限られていたが、TAPP1のPHドメインを用いることによりPI(3,4)P2の特異的な標識法を確立した。エンドソームの成熟過程で産生されるPI(3,5)P2についても、ATG18pおよびp40phox由来PXドメインタンパク質を併用することで特異的な標識法を確立した。PI(3,5)P2は細胞内では管状の突起状構造を持つエンドソームに局在していた。詳細に解析すると、PI(3,5)P2はエンドソームの突起部分には乏しく、小胞状構造に集中していた。細胞内オルガネラにおいてホスホイノシチドが不均一分布をとる例はほとんど知られておらず新規性の高い知見である。エンドサイトーシスの最初期において重要なPI(3,4,5)P3に対しても特異的な標識条件の検討を進めており、エンドサイトーシス以外にファゴサイトーシスにおいてもこれらの脂質分布を明らかにしつつある。
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