研究課題
細胞内の脂肪酸キャリアであるFABP分子群は、水に不溶な脂肪酸や脂肪酸代謝物の細胞内取り込み、輸送、代謝の調節を介して、様々な細胞機能に関わる。本年度の研究では、前部帯状皮質(ACC)に高発現する脂肪酸結合蛋白質3(FABP3)の、神経細胞の可塑性調節機構に対する機能的役割について追及した。1.野生型マウスを用いた免疫蛍光二重染色の結果、FABP3はparvalbumin(PV;抑制性介在神経のマーカー)と発現が一致していたことから、ACCにある抑制性介在神経は、FABP3を発現していることが明らかとなった。2.GABA関連分子の発現変化を解析したところ、GABA合成酵素のGAD67の発現量が、FABP3 KOマウスで有意に増加していた。3.FABP3 KOマウスACCでは、グルタミン酸の放出量が低下し、GABA含有量は有意に増加していた。4.興奮性神経活動を主に反映する、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ(CaMK)II及び転写因子CREBのリン酸化反応を解析したところ、いずれも低下していた。今後は、FABP3によるGABA合成系の調節機構と神経伝達調節機構について解析を行う。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、FABP分子群が細胞内シグナル伝達に対する制御機構の一部を、FABP欠損マウスおよびFABP発現細胞を用いた解析から明らかにした。さらに、FABPが発現を調節する分子の特定に成功した。FABPKOマウスに対する、脳内環境正常化による行動異常の改善効果の解析が終了していないものの、上述の研究成果は現在論文投稿準備中であり、おおむね順調に進展しているものと判断する。
計画書通りに鋭意研究を推進する。特にFABP3KOマウスにおける、脂質環境正常化による行動学的変化への影響の解析に尽力する。
FABPKOマウスに対する、脳内環境正常化による行動異常の改善効果の解析に着手していないため、未使用額が生じた。
次年度は、遺伝子導入実験に関連する細胞培養実験試薬等に平成26年度の未使用額を合算し、研究費を執行する予定である。
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