研究課題
脂肪酸結合タンパク質3(FABP3)は、細胞内の脂肪酸キャリアであり、水に不溶な脂肪酸の細胞内取込み・輸送・代謝の調節を介して、様々な細胞機能に関与している。中枢神経系においては、FABP3は神経細胞に特異的に発現しているが、ユビキタスな発現ではなく、脳領域や神経細胞種によって発現量が大きく異なり、特に、前帯状皮質の抑制介在神経細胞に強く発現している。FABP3遺伝子欠損(KO)マウスでは、前帯状皮質においてGABA合成酵素のGAD67の発現量が増加している。本研究では、FABP3が、前帯状皮質の抑制性介在神経においていかにGAD67の発現を制御し、どのような生理的意義を持つのかFABP3 KOマウスの解析を中心に検証した。本研究では、以下の点を明らかにすることができた。GAD67遺伝子発現に関与するプロモーター領域のメチル化状態と転写抑制因子(MeCP2、HDAC1)の結合をバイサルファイトシークエンス法とクロマチン免疫沈降法で解析した。FABP3 KOマウス前帯状皮質では、GAD67プロモーター領域の低メチル化と転写抑制因子結合量の減少が観察された。ホールセルパッチクランプ法を用いて前帯状皮質第2・3層の錐体細胞における微小興奮性後電流(mEPSC)と微小抑制性後電流(mIPSC)を記録した。その結果、FABP3 KOマウスではmIPSCの頻度が増加していたが、mEPSCの頻度には変化がなかった。
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