研究課題/領域番号 |
26860136
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
川合 克久 香川大学, 医学部, 助教 (80534510)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マクロパイノサイトーシス / メンブレントラッフィク / イノシトールリン脂質 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、細胞による非選択的取り込みであるマクロパイノサイトーシスの分子機構を明らかにすることを目的に研究を行った。先行研究により、マウスマクロファージ培養細胞RAW264において顕微鏡下で光依存的にマクロパイノサイトーシスを誘導する実験系(PA-Rac1誘導性マクロパイノサイトーシス)を確立しており、初年度では、この新規マクロパイノサイトーシス誘導系を用いて、従来型のマクロパイノサイトーシスとは異なる全く新しいマクロパイノサイトーシス機構が存在することを見出した。この新規マクロパイノサイトーシスは、短い期間(5分以内)で消失すること、また、細胞中心部に向かってチューブ状の構造物を出芽することを特徴としていた。さらに、小胞輸送に関与する低分子量Gタンパク質のRabファミリーの一つであるRab10が新規マクロパイノゾームに強く局在することを見出した。 本年度は、新規マクロパイノサイトーシスの更なる特徴付けと、関与する分子の同定を主に共焦点レーザー顕微鏡を用いたライブセルイメージング解析により行った。その結果、新規マクロパイノサイトーシスは、これまでのPA-Rac1誘導による人工的環境下だけでなく、低頻度ではあるが、通常の培養環境下でも起こることが明らかとなった。また、新規マクロパイノサイトーシスはIgG依存的ファゴサイトーシスに付随して起こることも明らかとなった。さらに興味深いことに、新規マクロパイノサイトーシスおいて形成されるマクロパイノゾームおよびそこから出芽するチューブ構造は、膜が閉じずに外環境と交通していることを見出した。新規マクロパイノサイトーシスに関わる分子としてRab10以外に、新たにEHBP1およびGRAF1などの分子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究成果で見出した新規Rab10陽性マクロパイノサイトーシスについて、本年度では、マクロパイノゾームの特徴付けを行った。その結果、新たに新規マクロパイノゾームおよびそこから出芽するチューブ構造が外環境とつながっていることを見出した。このことは、新規Rab10陽性マクロパイノサイトーシスが従来型のマクロパイノサイトーシスとは形態的に全く異なるものであることを示している。また、この新規マクロパイノゾームへ局在する分子群を同定した。Rab10を含むこれらの分子は、新規マクロパイノサイトーシスの制御分子として重要な役割を担っていることが予想される。Rab10の機能に関しては、下流のエフェクター分子あるいは、上流の制御因子などについて、不明な点が多く残っている。本研究成果はRab10の機能の解明にとって非常に重要な知見であると考えられる。以上のことから、新規Rab10陽性マクロパイノサイトーシスの解析に関して、本年度の研究は大きく進展したと判断した。一方、実験計画に挙げた、新規光活性制御タンパク質の確立に関して、実験系の構築途中であり、確立までは至っていない。よって、達成度は、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により見出した、新規Rab10陽性マクロパイノサイトーシスの特徴および役割について明らかにする。新規マクロパイノゾームに局在する複数の分子を同定しており、これらの分子の新規マクロパイノサイトーシスでの役割について解析する。特にRab10およびRab10のエフェクター分子であるEHBP1を中心に実験を行う。具体的には、各種変異体を用いたRab10の局在機構の解明(1)、EHBP1の活性化機構の解明(2)、Rab10の上流制御分子の解析(3)を行う。 (1)これまでに、複数のRab10の近縁のRabのクローニングを行い、蛍光タンパク質融合の発現系を得ている。そこで、これらのRabタンパク質のマクロパイノゾームへの局在の有無を明らかにし、アミノ酸配列との関連を解析する。また、Rab10の常時活性型変異体およびドミナントネガティブ変異体、さらにRab10とその他のRabタンパク質とのキメラ変異体などを利用し、局在機構あるいは機能解析を行う。 (2)Rab10はEHBP1のC末端側に結合することが予測されているが、EHBP1のC末端側のみの変異体およびC末端側欠失変異体を作製し、RAW264マクロファージへ発現させ、その影響について解析を行う。 (3)Rab10の上流因子にはRab10の活性化を担うGEFおよび不活性型を担うGAPがそれぞれ複数知られているこれらのタンパク質の発現系を構築し、その発現によるRab10陽性マクロパイノサイトーシスへの影響あるいは、Rab10陽性のマクロパイノゾームに対する局在性などを解析する。 以上の解析により新規Rab10陽性マクロパイノサイトーシスの解明を押し進める。また、新規光活性制御タンパク質が構築でき次第、マクロパイノサイトーシス実験系に組み込んでいく。
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