研究実績の概要 |
本研究では、マウスの精子形成に重要な役割を果たす精子幹細胞の維持や分化に関する分子機構を解明するための分子生物学的解析を実施した。これまでに、我々は精子幹細胞が分化する際に大規模なエピジェネティックな変化が起き、それが分化を制御している可能性があることを免疫染色による詳細な解析から見出し、「エピジェネティック スイッチ」として報告した(Development 140(17):3565-76)。このスイッチにはDNAメチル化関連因子の発現上昇やヒストン修飾量の増加などが含まれる。本研究ではそれらがゲノムのどの領域で起き、精子幹細胞の維持や分化に対してどのような影響を与えているのかを、次世代シークエンサーを用いた解析を通して調べることとした。まず始めに、マウスの精子幹細胞や前駆細胞をGFRa1-EGFP, Ngn3-EGFPマウスを用いてセルソーターで純化し、それを用いてトランスクリプトーム解析、DNAメチローム解析、ChIP-seq解析を行った。初年度はそれを採取可能な少数の細胞を用いて実施することのできるChIP-seqの実験系の条件設定のための検討を行い、約数万個の生殖細胞から各種ヒストン修飾を解析するためのChIP-seqの系を確立した。次年度以降はその実験系を用いてH3K4me3, H3K27me3等の修飾について調べ、さらに最終年度は遺伝子のエンハンサーと相関が認められているDNAメチル化、H3K27ac、H3K4me1等の修飾の状態についての詳細なデータ解析を進め、それぞれの相関を調べることができた。その結果、これらのエピジェネティックな修飾によって制御される遺伝子の同定を進めることができた。
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