研究課題/領域番号 |
26860139
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
砂堀 毅彦 順天堂大学, 医学部, 助教 (00407115)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 低酸素 / 脳虚血 / 神経細胞死 / Toll様受容体 / オートファジー / 炎症性サイトカイン / 海馬 |
研究実績の概要 |
我々は、低酸素/脳虚血負荷後に誘導されるオートファジーが神経細胞死の一因となることを見出している。一方で、Toll様受容体2(TLR2) 遺伝子欠損マウスにおいても障害後早期炎症性サイトカインの発現が抑制されることで神経細胞死が減少することを明らかにした。本研究では、まず TLRとオートファジー誘導の関連性を確認するため、TLR2遺伝子欠損マウスの障害6時間後の海馬において、オートファジー誘導の指標となるLC3のI型からII型への転換をウェスタンブロット法により検討した。結果、TLR2遺伝子欠損マウスでは、野生型マウスで認められたオートファジーの誘導が抑制されていることが示唆された。一方、オートファジー不全マウスであるAtg7遺伝子欠損マウスでは、TLRの下流で誘導される早期炎症性サイトカインの発現が抑制されていた。以上の結果は、低酸素/脳虚血負荷後TLRの活性化とオートファジーの誘導は相乗的に惹起され神経細胞死を引き起こすことが示唆された。 また、低酸素/脳虚血負荷後に早期炎症性サイトカインを発現する細胞種を探索するため、2013年度包括脳リソース・技術支援「遺伝子改変マウス作製ドライバーマウス支援」により、新潟大学崎村建司教授と共同でTLR2のfloxedマウスを作製した。現在、神経細胞とミクログリア細胞で特異的にTLR2を欠失させ、低酸素/脳虚血負荷後の早期炎症性サイトカイン発現機序を確認する予定である。また、オートファジーとの関連を検討するため、同様に神経細胞とミクログリア細胞で特異的にAtg7遺伝子を欠損させたマウスにおける低酸素/脳虚血負荷に対する耐性も併せて確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに低酸素/脳虚血負荷後にToll様受容体(TLR)を介した炎症性サイトカインの発現とオートファジーの誘導は相乗的に惹起され神経細胞死を引き起こすことが示唆された。また、低酸素/脳虚血負荷後の神経細胞死を誘導する責任細胞を特定するため新潟大学崎村建司教授と共同でTLR2のfloxedマウスを作製した。 上記の一部は第36回日本神経科学大会においてポスター発表した。
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今後の研究の推進方策 |
代表者は、前年度までに新潟大学崎村建司教授と共同でTLR2のfloxedマウスを作製した。本年度は同マウスと幼若な神経細胞特異的に発現するbeta-tubulinIII-Creマウス、ミクログリア細胞特異的に発現するCD11b-Creマウスとそれぞれ交配し、低酸素/脳虚血負荷後どの細胞種が早期炎症性サイトカインを発現し神経細胞死を誘導するか検討する。具体的には、神経細胞、ミクログリア細胞特異的なTLR2遺伝子欠損マウスを低酸素/脳虚血負荷に暴露し、海馬錐体細胞の神経細胞死(TUNEL染色)、オートファジーの誘導(ウェスタンブロットによるLC3のI型からII型への転換の検討、LC3の組織免疫化学染色、電子顕微鏡観察)、及び早期炎症性サイトカインの発現量(定量的PCR法)を検討する。本研究により、低酸素/脳虚血負荷後の神経細胞死を誘導する責任細胞が特定でき、新規薬剤の標的を明確にできるものと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
TLR2-floxedマウスの作製に当初予定より時間がかかり、動物飼育費を次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品は、基礎細胞培養培地、細胞培養用皿、免疫学的染色用抗体、スライドグラス、その他の実験用プラスチック製品等の購入予定である。また、透過型電子顕微鏡を用いた観察を行うため、オスミウムや樹脂といった試薬の費用、および動物飼育費も併せて算出した。また、旅費に関しては国内学の学会において研究成果を報告するために計上した。
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