近年、食生活の欧米化に伴い、生活習慣病から重篤な病気に進展する症例が多く見られている。肝臓においては脂肪肝から進展した非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が将来的に肝硬変や肝癌に進展するリスクがあるため、その治療法の確立が急務である。我々はNASHなどの肝臓病態で見られる筋線維芽細胞の存在に着目し、この細胞が線維形成に重要な役割を持っていると考え、研究を行っている。しかしながら、これまで有効な細胞マーカーが存在しなかったため、その機能解析が進んでいない。最近、肺の線維化を誘発する細胞としてオステオポンチン(OPN)陽性の筋線維芽細胞の存在が明らかとなった。本研究では肝臓内のOPN陽性の筋線維芽細胞の存在を明らかにし、その細胞の単離および機能解析を目的として研究を進めた。初年時に正常肝からOPN陽性細胞の分離を試みたが、OPN陽性細胞がほとんど存在せず、細胞を分離することができなかった。そこで、障害肝から分離できるOPN陽性細胞数が非常に少ないことが想定されたため、OPNの発現が高い障害肝モデルを探索した。その結果、四塩化炭素を投与した慢性肝障害モデルやメチオニン・コリン欠乏食を投与したNASHモデルでOPNの強発現を確認することができた。現在、四塩化炭素を投与した肝障害モデルを作製し、OPN陽性細胞の分離に着手している。それと同時に、OPNがクッパー細胞などのマクロファージでも発現していると言われているが、マクロファージのマーカーF4/80や活性化星細胞などのマーカーα-SMAを使用して病理学的に立証を行った。その結果、OPN陽性細胞の局在はF4/80陽性細胞と局在が異なり、門脈域周辺に限局して存在していることが明らかとなった。これらのことから、OPNが線維化の初期段階における筋線維芽細胞の有用なマーカーであることが示唆された。
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