研究課題
環状ホスファチジン酸(cPA)が皮膚繊維芽細胞や軟骨細胞に対しヒアルロン酸産生を促進する作用を持つことを発見した。本研究課題ではその作用機序を明らかにするために、cPAの受容体(GPCR)活性化により誘導されるヒアルロン酸合成に関与する細胞内情報伝達経路の全貌を明らかにすることを目指した。その結果、cPAに構造が似ているLPAにもヒアルロン酸合成促進作用があることが示された。また、cPA、LPA刺激によって合成されるヒアルロン酸の分子量は1 × 10^6 Da よりも大きく、cPA、LPAがヒアルロン酸合成酵素HAS2 (Hyaluronan synthase2) の発現を上昇させることが示された。次にcPAやLPAのヒアルロン酸合成促進の作用機序について検討を行った。NB1RGBにはLPA1が強く発現していたことから、LPA1の阻害剤 (Ki16425) を用いてヒアルロン酸合成への影響について調べた。その結果、Ki16425でcPA、LPAのヒアルロン酸の合成が有意に抑制され、このことからLPA1の関与が示唆された。さらに下流のシグナル伝達系についても各種阻害剤を用いて解析を行った。その結果、cPA、LPAはLPA1-Gi/o、PI3K、ERK、CREBを活性化することで、HAS2 mRNAの発現を上昇させていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題の目的のひとつに環状ホスファチジン酸(cPA)が皮膚繊維芽細胞や軟骨細胞に対しヒアルロン酸産生を促進する作用機序の解明をあげていた。1年目に、cPAの受容体(GPCR)活性化により誘導されるヒアルロン酸合成に関与する細胞内情報伝達経路の全貌を明らかにし、その成果を論文、学会で発表した。したがって、おおむね順調に実験が進行している。
本研究課題の最終的な目的は、27年間の加齢に伴う細胞の老化をエピジェネティックに記憶している同一の成人男性から採取された4種類の細胞株(採取時の年齢: 36, 47, 56, 62歳)を使用して、老化によりどのようにヒアルロン酸合成調節が変化しているのか解析することである。現在それらの細胞を培養し、ヒアルロン酸合成量の変化について測定を行っており、計画に変更はない。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)
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