研究課題/領域番号 |
26860145
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
柏原 俊英 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (20552334)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | L型カルシウムチャネル / 心筋 / カゼインキナーゼ2 / アンジオテンシンⅡ |
研究実績の概要 |
心室筋細胞のT管のCaV1.2 L型Ca2+チャネル(LTCC)は、興奮収縮連関の要である。心筋のLTCCの基礎活性は、病態に応じてリン酸化と脱リン酸化によりダイナミックに調節されている。申請者はこれまでに、AT1アンジオテンシン受容体を介して駆動されるカゼインキナーゼ2(CK2)がLTCC活性を倍増させることを見出している。本研究は、CK2によるLTCC活性制御機構の分子機構を明らかとすることを目的とした。本研究では先ず、CK2によるCaV1.2のリン酸化部位をリコンビナントLTCCを用いて調べた。CK2のα’とβの強制発現はリコンビナントLTCCの活性を著明に増加させたが、CaV1.2の1704番目のトレオニンのアラニン置換体ではCK2α’βはLTCCを活性化させなかった。すなわちCK2α’βはCaV1.2の1704番目のトレオニンをリン酸化することでLTCCを活性化させることが分かった。次に、マウス不死化心房筋細胞株HL-1を用いて、CK2α’、α、βのそれぞれのノックダウンがアンジオテンシンII(AII)刺激によるLTCC活性の増加に与える効果を検討した。CK2α’とβサブユニットのノックダウンはそれぞれAII刺激によるLTCC活性の増加を有意に抑制したが、αサブユニットのノックダウンは有意な効果を示さなかった。さらに、AII刺激によるLTCC活性増加の分子機序を分子生物学的手法を用いて解析した結果、AIIはAT1アンジオテンシン受容/βarrestin2/Src tyrosine kinase/CK2α’βを介してLTCCを強力に活性化させることを見出した。今後はさらにこの機序の生理的・病態生理学的意義を明らかにしていく。世界でもCK2によるLTCC制御機構を明らかにした研究者はおらず、本研究は心臓生理学上の大きなブレイクスルーになる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画にある、①CK2によるCaV1.2サブユニットのリン酸化部位の同定と②HL-1細胞でCK2α及びα’触媒サブユニットとβ調節サブユニットのノックダウンがLTCC活性に与える効果の解析を終えることができたため。 CK2によるCaV1.2サブユニットのリン酸化部位をリコンビナントLTCCを用いて調べた結果、tsA201細胞においてCK2のα’触媒サブユニットとβ調節サブユニットの強制発現はリコンビナントLTCCの活性を著明に増加させたが、CaV1.2サブユニットの1704番目のトレオニンのアラニン置換体ではCK2α’βはLTCCを活性化させなかった。すなわちCK2α’βはCaV1.2サブユニットの1704番目のトレオニンをリン酸化することでLTCCを活性化させることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、まずAII刺激によるLTCC活性増加の分子機序の詳細を検討する。具体的には、Src tyrosine kinase とCK2α’β及びCK2α’βと LTCCの相互作用を免疫沈降法で検討する。次に、申請者らは最近、AIIがカゼインキナーゼ2を介して新生児マウスの心室筋細胞のLTCC活性を倍増させるが、成体マウスの心室筋細胞のLTCC活性には影響しないという興味深い結果を得た。そこで、平成27年度の研究計画にある心臓特異的CK2α’ノックダウンマウスの解析と並行して、この現象をヒントにAII刺激によるLTCC活性増加の生理的・病態生理学的意義を明らかにしていく。
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