研究実績の概要 |
本年度は正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)を用いて、UVA曝露によるサイトカイン産生と分化異常誘導機構へのATPの関与の検討を行った。 (1) UVA照射による細胞外へのATP放出:ATP放出経路として知られているヘミチャネル(connexin43, pannexin1)の発現をウェスタンブロット及び蛍光免疫染色にて確認した。UVA照射による速やかな細胞外ATP濃度の上昇が観察されたが、この細胞外ATP濃度の上昇はconnexin43阻害剤の前処置によってのみ抑制された。よって、UVA照射はconnexin43を介して細胞外へATPを放出させることが考えられた。 (2) UVA照射によるサイトカイン産生及び分化異常へのATPシグナリングの関与:UVA照射によりIL-1α, IL-6, IL-8産生量が上昇した。このUVA誘導性IL-6, IL-8産生はIL-1α中和抗体、ATP分解酵素及びP2Y6受容体の前処置により抑制された。また、UVA照射はケラチノサイト分化マーカーであるkeratin 10とloricrinの発現を減少させ、involucrinの発現を上昇させた。これら分化マーカーの発現変動は、ATP分解酵素及びP2Y6受容体阻害剤の前処置により抑制された。 以上の結果を総合すると、UVA照射によりconnexin43を介して細胞外に放出されたヌクレオチドは、P2Y6受容体を活性化させ、炎症性サイトカイン産生と分化異常を誘導することが示された。
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