補体C1qの神経細胞への結合を検討するために、過剰発現C1qを濃縮し、初代培養神経細胞に処理したところ神経細胞の一部のコンパートメントへの結合が見られた。補体C1qはC1複合体として自然免疫古典経路を動かすので、C1rおよびC1sの濃縮タンパク質または精製タンパク質を添加し、C1複合体を再構成させて神経細胞への結合を観察したところ、C1q単体での結合と差異を認められなかった。また、内因性C1qの結合も培養神経細胞実験系で観察された。内因性のシグナルにC1rやC1sなどのシグナルが共局在するかは確認できていないが、シグナルの下流であるC3は観察されていない。興味深いことに、C1qは特定の糖鎖パターンを認識する抗体によるシグナルとは一致し、またその糖鎖を切断する酵素処理によりC1qのシグナルが消失したことから、C1qは特定の糖鎖に対して単独で結合しうるものと思われた。
人工的興奮性シナプス形成分子(シナプスコネクター)によるin vivoでの詳細な機能解析を行った。小脳平行線維-プルキンエ細胞間のシナプス喪失により運動失調を呈する複数種類の遺伝子改変マウスにおいて、小脳へ投与により運動失調が回復することが確認され、電子顕微鏡による解析からシナプス形成の部分的な回復が確認された。また、シナプスを積極的に貪食させる制御分子としてシナプス接着分子の細胞外ドメインと補体C3dgをつなげたキメラタンパク質のデザイン、および、シナプス形成を解除する制御分子としてCbln1の部分ドメイン発現系を構築した。
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