AVPニューロンに発現するイオンチャネルに関連して、高浸透圧条件下で活性化し、flufenamic acid(FFA)に感受性があるイオンチャネルについて、主にパッチクランプ法を用いて解析を進めた。昨年度のパッチクランプ法の電圧固定法を用いた研究で安定的に記録できるようになったカチオンチャネルは、高浸透圧条件下で活性化し、FFA投与により抑制されるものと更に活性化されるものとの2種類存在する事が明らかになった。FFAによって更に活性化する電流は、高浸透圧条件下で活性化される電流とは別のタイプのものである事が示唆された。 また、AVPニューロンの自発的発火活動に関連して、これまでの実験は室温で行い、通常の浸透圧条件下においてもかなり頻繁に自発的発火が起きていたが、実験の温度条件を室温から35度付近にまで上げて行うと、膜電位が低くなり、自発的発火活動も有意に抑制されることが明らかになった。 低浸透圧刺激により活性化するイオンチャネルに関連して、ATP-Binding Cassette (ABC) トランスポータースーパーファミリーの1つであるcystic fibrosis transmembrane conductanceregulator(CFTR)タンパクが、一般に慢性便秘薬として処方されている潤腸湯(JCT)の投与により活性化することを、ヒト腸由来Caco-2細胞を用いた実験で明らかにした。更に、JCTは、細胞内のサイクリックAMPの上昇を引き起すことも明らかにした。これらの結果より、ヒトの腸内において、JCTが作用すると細胞内サイクリックAMPが上昇し、これがCFTRを活性化させ、腸内への水の分泌が促進されるために腸の蠕動運動による便の移動がスムーズになり、便秘が解消されることが示唆された。
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