研究実績の概要 |
概日時計の中枢である、視交叉上核の神経ネットワークの生後発達に、時計遺伝子Cryが関与する事を以前報告した(Ono et al., 2013 Nature Communications)。私たちは、Cry依存・非依存的ネットワークの分子メカニズムを明らかにするため、視交叉上核に発現している神経ペプチドである、AVP, VIPに着目した。その結果、Cryに依存してAVP発現量が低下し、発達初期にはVIPを介したネットワークが重要であることを明らかにした。(Ono et al., 2016 Science Advances)。 哺乳類の概日リズムは、複数の時計遺伝子の転写・翻訳を介したネガティブフィードバックループにより形成されることが提唱されている。その中で、Per1とBmal1は逆位相で振動し、それぞれのフィードバックループがインターロックして24時間のリズムが刻まれている。私たちは、光ファイバーを用いたin vivo発光計測システムを用いて、自由行動下マウス視交叉上核からのPer1およびBmal1の遺伝子発現リズムと、自発行動の同時計測システムを構築し、外界の光環境を一時的に変化させると、Per1とBmal1の位相関係が変わることを明らかにした。また培養視交叉上核では、Per1とBmal1のリズム周期が異なる事を、発光・蛍光多機能同時計測を行う事で明らかにした (Ono et al., 2017 PNAS)。この結果は、二つの異なる振動機構が視交叉上核に存在する事を示す。
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