研究課題
視床下部は自律機能や本能行動の中枢として知られており、多様な生理現象を統合的に制御している。視床下部に局在する、オレキシンと呼ばれる神経ペプチドを産生する神経(オレキシン神経)は、青斑核や扁桃体、弓状核といった多様な脳領域に投射している。また、オレキシン神経は機能的にも覚醒や摂食、報酬といった多様な行動・生理現象への関与が報告されている。本研究では、この複雑な入出力を持つオレキシン神経の個別の投射経路を選択的に活動操作することにより、その機能分担を明らかとすることを目指している。平成27年度においては、投射経路選択的な遺伝子発現の制御を目標とした。申請者はまず、投射経路特異的な遺伝子発現ツールの開発を行った。その第一弾として、テタヌス毒素C断片の持つ経シナプス逆行性輸送される特徴を利用した、改変型Creリコンビナーゼを作成した(特許:P2015-208308A)。投射経路選択的な遺伝子発現を確認するため、既に投射経路の特異性が良く知られている腹側被蓋野から側坐核へ至る投射経路、および黒質緻密部から線条体へ至る投射経路を機能確認の対象とした。アデノ随伴ウイルスベクターを用いた機能確認では概ね良好な結果が得られたため、次にオレキシン神経から青斑核へ至る投射経路を対象として、実験を行った。その結果、青斑核に投射するオレキシン神経は、視床下部外側野において局在の偏りなく分布していることが示唆された。現在は、逆行性輸送の効率を上げるために各種機能分子を付け加えた第二世代の分子群を開発中である。また、逆行性感染する特徴を持ったイヌアデノウイルスベクターを用いた投射経路選択的な遺伝子発現も平行して進めている。
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