研究実績の概要 |
臨床的な慢性筋痛症に特徴的な筋の一部に限局した痛覚過敏と筋硬結(筋組織内に生じる硬いしこり)を作り出すため、光遺伝学を駆使し、チャネルロドプシン2(ChR2)の筋内異所性発現によりChR2 が発現する筋細胞のみを選択的に収縮させ、従来とは異なる、より臨床所見に近い動物モデルの開発とメカニズム解明を目指し実験を開始した。 1. 最適なアデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターの検討:最も効率よく遺伝子導入可能なウィルスのSerotypeを調べるためにSerotype 1, 9, 10, DJを用いて検討実験を実施。Serotype 9と10を用いたAAVベクターを投与した個体では、筋細胞上にChR2の発現が確認でき、筋の上からの光刺激でわずかながら筋収縮が肉眼で確認できた。 2. 最適な投与量と投与時期の検討:AAVベクターの投与量を5, 10, 15, 40 ulに振って最適な投与量を調べた結果、前脛骨筋に対しては10 ulの投与量が最も効率的にChR2の発現を誘導できることを確認。また、投与後1, 2, 3週で発現量を比較したところ、1週よりも2, 3週後の方がより発現量が多かった。2, 3週では大きな差は見られなかった。 筋・筋膜性疼痛の発現メカニズムを包括的に調べる為、遅発性筋痛モデルを用いた実験も同時進行で実施した。その結果、遅発性筋痛を生じる伸張性収縮運動の伸張可動域と伸張スピードが遅発性筋痛発現において重要であることが確認された。また、疼痛への関与が指摘されていた組織損傷は、疼痛発現において必須ではなく、筋において発現増加する神経成長因子が重要な役割を果たすことが明らかとなった。現在、上記実験内容を論文発表準備中である。
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