研究実績の概要 |
Serotype 1, 9, 10, DJの中で、Serotype 9を用いたAAVベクターを導入した個体において最も筋細胞上のChR2の発現量が多くなる事が分かった。ChR2を多数発現できた個体では皮膚上からの光刺激で筋収縮を誘発できたが遅発性筋痛は生じなかった。皮膚を切開し筋膜上に直接光刺激を加える事で強い筋収縮を誘導できる事が分かったが、皮膚切開の影響により筋痛を正しく評価できない事が分かった。AAVベクターの投与量を5, 10, 15, 40ulに振って最適な投与量を調べた結果、前脛骨筋に対しては投与量依存的にChR2発現量が増加する傾向がみられたが、10, 15, 40ulの間において有意な差はなかったため、15ulが最も発現効率の良い投与量である事が分かった。また、投与後1, 2, 3, 4週で発現量を比較したところ、投与後の経過日数依存的に発現量が増加する傾向が見られたが、3, 4週間では有意な差はなかった。1回目のAAVベクター投与3週間後に再度2回目のAAVベクターを投与する事で、ChR2の発現を増大させられる事が分かったが、皮膚を介した光刺激により筋の強縮を誘導するには不十分であった。 ChR2の発現量を増大させるためにエレクトロポレーション法を試みたが、有意な発現増大を誘導する事はできず更なる条件検討が必要である。 筋・筋膜性疼痛の発現メカニズムを包括的に調べる為、遅発性筋痛モデルを用いた実験も同時進行で実施した結果、遅発性筋痛は伸張性収縮の伸張範囲及び角速度に依存し、筋に付加されるトルクの積分値と上昇率が重要である事が確認された。筋痛発現において組織損傷は必須ではなく筋において発現増加する神経成長因子が重要な役割を果たす事が明らかとなった。現在、上記実験内容の論文を疼痛関連科学雑誌へ投稿中である。
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