骨格筋に由来する痛み(肩こり、腰痛等)の罹患率は我が国において極めて高く、医学的・社会的に重要度が高い。「非活動性侵害受容器」は炎症等の病態時にはじめて活性化する特徴を持ち、骨格筋の痛みの末梢神経機構に重要であると考えられてきた。しかし、骨格筋においてその存在は実証されておらず、病態時の役割や活性化機構も明らかになっていない。本研究の目的は、骨格筋における「非活動性侵害受容器」の存在の実証とその活性化機構の解明である。 今年度(平成28年度)は、昨年度に引き続き正常ラット腓腹筋における神経特性の分布を調べた。腓腹筋への機械刺激に対する反応の有無で分類した結果、68例中10例が機械刺激に反応し、残り58例は機械刺激に反応しなかった(前者を機械感受性受容器、後者を機械非感受性受容器と呼ぶこととする)。過去の報告と比較したところ、他組織と骨格筋とで神経特性の分布が大きく異なっている可能性が示唆された。 次に、機械非感受性受容器について、反復電気刺激による軸索伝導速度の初期変化度に応じて、交感神経(Type1)と「非活動性侵害受容器」(Type2)とに分類した。この分類により、機械非感受性受容器58例のうち51例がType1と推測され、残る7例はType2である可能性が考えられた。さらに、腓腹筋への炎症スープ投与によって新たに機械刺激反応性を獲得した例が1例認められ、軸索伝導速度によりType2に分類された。「非活動性侵害受容器」に関する報告は他組織においてなされているが、骨格筋において確認したのは今回初めてである。
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