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2014 年度 実施状況報告書

哺乳類の概日活動リズム制御機構における新規松果体液性因子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 26860163
研究機関近畿大学

研究代表者

池上 啓介  近畿大学, 医学部, 助教 (10709330)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード松果体 / 視交叉上核 / 時計遺伝子 / メラトニン / 時差ぼけ / 概日リズム
研究実績の概要

松果体除去により恒明条件下と短周期明暗条件下において概日活動リズムが消失し、さらに光感受性が劇的に上昇するという全く新しい結果が得られた。そこで、メラトニン以外の松果体液性因子が概日時計の安定性と光感受性に重要であることを証明し、その因子の同定とその作用機序を解明することを目的とした。
平成26年度の申請者の研究で、松果体除去により概日リズムの安定性が低下し、光感受性を亢進させ、時差ぼけになりにくいことを発見したのでアメリカ時間生物学会(SRBR2014)で発表した。また、松果体除去による光感受性の亢進に、当初はメラトニンが関与していないことを想定していたが、松果体メラトニンの欠乏が光感受性に影響を与えている可能性が示唆された。網膜変性マウスでも光感受性が亢進したため、メラトニンは眼の網膜神経節細胞層か内顆粒層に作用している可能性が示唆された。
さらに、松果体除去により自由継続リズムが変化したが、光感受性の影響を除くために眼球除去をしても周期差は変わらなかった。視交叉上核(SCN)スライスと松果体を共培養してPer2::dlucの発光リズムを解析すると振幅が増幅することから、松果体液性因子が直接SCNにおける概日リズムの安定に寄与していることを初めて発見した。リズムの安定性が低下すると時差ぼけになりにくいことさ示唆されている。そこで、時差ぼけモデルを用いたところ松果体除去により新規明暗環境への再同調が促進されることが判明し、メラトニンではなく松果体セロトニンが関与していることを発見した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成26年度の研究で、視交叉上核(SCN)のスライス培養におけるPer2::dlucの発光リズムの振幅が松果体との共培養により増幅することから、松果体液液性因子がSCNにおける概日リズムの安定に寄与していることを初めて発見した。さらに、時差ぼけモデルを用いたところ松果体除去により新規明暗環境への再同調が促進されることが判明し、松果体セロトニンが関与していることを発見した。また、松果体除去による光感受性の亢進に、当初はメラトニンが関与していないことを想定していたが、松果体メラトニンの欠乏が光感受性に影響を与えている可能性が示唆された。以上のようにメラトニンとその他の因子の使い分けを示唆できた点で順調に進展しているといえる。しかし、当初平成26年度の研究計画に含まれていた光感受性に関する松果体因子の1つは同定はできたものの他の因子の関与は否定できておらず松果体除去後の網膜のタンパク質の網羅的に解析し、作用機序の同定をする必要がある。また、in situ hybridization法を用いてSCNにおけるPACAPやグルタミン酸などの受容体発現に与える松果体因子の影響や網膜からの神経投射先の神経核に及ぼす影響を検討する必要がある。

今後の研究の推進方策

平成26年度までの研究で、松果体メラトニンが網膜の光感受性に関与し、SCNにおける概日リズムの安定性にはあまり寄与せず松果体セロトニンが優位である可能性が示唆された。しかし、他の松果体液性因子が関与している可能性も十分あり、今後、SCNの概日リズムの安定や振幅の増加に関与する松果体液性因子を質量分析やゲル濾過クロマトグラフィーを用いて分離解析し探索する。また、光感受性に対する効果が同じ因子が担っているとは限らず、メラトニンとの相互作用による効果も考えられる。実際、RGCからの神経伝達物質PACAPはメラトニン存在下で阻害される(von Gall et al., J Neurosci 1998)。そこで、上記で精製した画分による光感受性調節効果を網膜の組織培養を用いてその遺伝子発現変動をDNAマイクロアレイを用いて解析する。さらに、松果体セロトニンが時差ぼけの際のSCNに及ぼす影響を免疫組織化学やin situハイブリダイゼーションを用いて解析し、詳細な作用機序を同定する。また、網膜やSCN以外にも視覚野へ伝達される経路における神経核に影響を及ぼしている可能性も無視できないのでcFos発現を調べて検討する。

次年度使用額が生じた理由

実験の効率化により、必要消耗品量を節約することに成功したため。

次年度使用額の使用計画

実験の充実のための消耗品の購入に充てる。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Low temperature-induced circulating triiodothyronine accelerates seasonal testicular regression.2015

    • 著者名/発表者名
      Ikegami K, Atsumi Y, Yorinaga E, Ono H, Murayama I, Nakane Y, Ota W, Arai N, Tega A, Iigo M, Darras VM, Tsutsui K, Hayashi Y, Yoshida S, Yoshimura T
    • 雑誌名

      Endocrinology

      巻: 156 ページ: 647-659

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1210/en.2014-1741

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Tissue-specific post-translational modification allows functional targeting of thyrotropin.2014

    • 著者名/発表者名
      Ikegami K, Liao XH, Hoshino Y, Ono H, Ota W, Ito Y, Nishiwaki-Ohkawa T, Sato C, Kitajima K, Iigo M, Shigeyoshi Y, Yamada M, Murata Y, Refetoff S, and Yoshimura T
    • 雑誌名

      Cell Reports

      巻: 9 ページ: 1-9

    • DOI

      doi:10.1016/j.celrep.2014.10.006

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Thyrotoropin receptor knockout changes monoaminergic neuronal system and produces methylphenidate-sensitive emotional and cognitive dysfunction.2014

    • 著者名/発表者名
      Mouri A, Hoshino Y, Narusawa S, Ikegami K, Mizoguchi H, Murata Y, Yoshimura T, Nabeshima T
    • 雑誌名

      Psychoneuroendocrinology

      巻: 48 ページ: 147-161

    • DOI

      doi:10.1016/j.psyneuen.2014.05.021

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Sperm activation by heat shock protein 70 supports the migration of sperm released from sperm storage tubules in Japanese quail (Coturnix japonica).2014

    • 著者名/発表者名
      Hiyama G, Matsuzaki M, Mizushima S, Dohra H, Ikegami K, Yoshimura T, Shiba K, Inaba K, Sasanami T
    • 雑誌名

      Reproduction

      巻: 147 ページ: 167-178

    • DOI

      doi.org/10.1530/REP-13-0439

    • 査読あり
  • [学会発表] Analysis of diurnal yawning rhythm in Wister rat2015

    • 著者名/発表者名
      池上啓介、重吉康史
    • 学会等名
      日本生理学会・日本解剖学会
    • 発表場所
      神戸(国際会議場)
    • 年月日
      2015-03-23
  • [学会発表] 春告げホルモンTSHにおける組織特異的翻訳後修飾の生理機能2014

    • 著者名/発表者名
      池上啓介、吉村崇
    • 学会等名
      細胞センサーの分子機構・相互関連・ネットワーク研究会
    • 発表場所
      岡崎(生理学研究所)
    • 年月日
      2014-12-04
    • 招待講演
  • [学会発表] 春告げホルモンTSHにおける組織特異的翻訳後修飾の機能解析2014

    • 著者名/発表者名
      Keisuke Ikegami, Xiao-Hui Liao, Yuta Hoshino, Hiroko Ono, Wataru Ota, Yuka Ito, Taeko Nishiwaki-Ohkawa, Chihiro Sato, Ken Kitajima, Masayuki Iigo, Yasufumi Shigeyoshi, Masanobu Yamada, Yoshiharu Murata, Samuel Refetoff, and Takashi Yoshimura
    • 学会等名
      日本時間生物学会
    • 発表場所
      福岡(九州大学医学部百年講堂)
    • 年月日
      2014-11-08
  • [学会発表] Functional analysis of tissue-specific post-translational modification of springtime hormone TSH2014

    • 著者名/発表者名
      Keisuke Ikegami, Xiao-Hui Liao, Yuta Hoshino, Hiroko Ono, Wataru Ota, Yuka Ito, Taeko Nishiwaki-Ohkawa, Chihiro Sato, Ken Kitajima, Masayuki Iigo, Yasufumi Shigeyoshi, Masanobu Yamada, Yoshiharu Murata, Samuel Refetoff, and Takashi Yoshimura
    • 学会等名
      International Symposium by JSC
    • 発表場所
      福岡(九州大学医学部百年講堂)
    • 年月日
      2014-11-07
  • [学会発表] 脊椎動物における光周性の制御機構(Photoperiodic response system in vertebrates)2014

    • 著者名/発表者名
      池上啓介、吉村崇
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2014-09-14
    • 招待講演
  • [学会発表] Analysis of pineal function in melatonin-proficient CBA/N mice2014

    • 著者名/発表者名
      Ikegami K, Shigeyoshi Y
    • 学会等名
      The 30th Anniversary Meeting of Sapporo Symposium on Biological Rhythm
    • 発表場所
      札幌(北海道大学)
    • 年月日
      2014-07-26
  • [学会発表] Functional analysis of pineal gland in melatonin-proficient CBA/N mice2014

    • 著者名/発表者名
      Ikegami K, Shigeyoshi Y
    • 学会等名
      2014 SRBR
    • 発表場所
      Montana, USA
    • 年月日
      2014-06-17
  • [学会発表] Strain-dependent embryonic lethality induced by flanking genes in homozygous ST8sia2-deficient mice2014

    • 著者名/発表者名
      Keisuke Ikegami, Kazumasa Saigoh, Mamoru Nagano, Susumu Kusunoki, Yasufumi Shigeyoshi
    • 学会等名
      日本発生学会
    • 発表場所
      名古屋(ウィンク愛知)
    • 年月日
      2014-05-27 – 2014-05-28
  • [備考] 「春よ来い」生物の巧みな生存戦略、仕組み解明へ 【WPI-ITbM】

    • URL

      http://www.aip.nagoya-u.ac.jp/public/nu_research_ja/highlights/detail/0001858.html

  • [備考] プレスリリース「ホルモンが一人二役を演じる仕組みを解明」

    • URL

      http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp/ja/research/20141030_Yoshimura_TSH_JP.pdf

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公開日: 2016-06-01  

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