研究課題/領域番号 |
26860164
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 仁士 産業医科大学, 医学部, 助教 (80644880)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 疼痛ストレス / 遺伝子改変動物 / 視床下部 / 脊髄後角 / 最初期遺伝子 |
研究実績の概要 |
脊髄後角および視床下部における疼痛刺激に対するc-fos発現を検討した。研究にはニューロンの活動性の指標として汎用されるc-fosに緑色(enhanced Green Fluorescent Protein: eGFP)蛍光タンパクで標識した雄性c-fos-eGFPトランスジェニックラットを用い、急性疼痛ストレスモデルとしてカプサイシンおよび5 %ホルマリン液を後肢に皮下注射して完全コントロール、生理食塩水および溶媒注射群と比較した。 視床下部の視索上核(SON)では注射90分および3時間後にカプサイシン群とホルマリン群とでeGFP蛍光の増加を認めた。同様に視床下部室傍核(PVN)小細胞領域では90分後にホルマリン群、3時間後にカプサイシン群およびホルマリン群でeGFP蛍光の増加を認めた。また、PVN大細胞領域では3時間後にカプサイシン群とホルマリン群にeGFP蛍光の増加を認めた。一方脊髄後角Ⅰ- Ⅱ層では90分および3時間後の両方でカプサイシン群とホルマリン群にeGFP蛍光の増加を認めた。生理食塩水および溶媒注射群ではeGFP蛍光の増加は認めなかった。 これらの結果より急性疼痛ストレスに対してはSONとPVNの大細胞領域、小細胞領域が活性化している事、同時に脊髄後角Ⅰ- Ⅱ層でもニューロンの活性化が見られることが明らかになった。なお、カプサイシンとホルマリンは、様々な刺激に機能的多様性を有するイオンチャネルファミリーであるTransient Receptor Potential (TRP)V1およびTRPA1の受容体アゴニストとして知られている。平成26年度(初年度)はこれらTRPV1やTRPA1チャネルの活性化により脊髄後角および視床下部SONやPVNが経時的に活性化されていく過程を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究に使用するトランスジェニックラットの繁殖が順調に進んで安定的に供給されたこと、当初計画していた急性疼痛ストレスモデルにおける視床下部、脊髄後角の疼痛反応の解析が終了したこと、かつこれらの反応は鋭敏で長時間持続することを明らかに出来たことにより、当研究課題初年度の到達度としては概ね順調であると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
eGFP蛍光での疼痛反応についての解析に引き続き、Fosタンパクの発現を同部位で観察し、これらの発現動態の違いについての解析を計画している。また、初年度には急性疼痛ストレスモデルを用いた解析であったので、今後はアジュバント関節炎による慢性疼痛ストレスモデルや知覚過敏モデルも用いて同様の解析を行う予定である。さらに、in situハイブリダイゼーションを用いてc-fos遺伝子発現の変化についても解析を進める計画としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は192円で、概ね予定通りに直接経費を使用している。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品購入費として薬剤および試薬購入費として使用する予定である。
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