研究課題
本研究では、ニューロン活動の指標となる Fos タンパクを改変緑色蛍光タンパク (eGFP) で標識した c-fos-eGFP トランスジェニックラットを用い、eGFP を指標に疼痛・炎症ストレスに対する中枢神経系の侵害受容機構を可視化・定量化した。成熟雄性 c-fos-eGFP トランスジェニックラットの両足底部に、15 % カプサイシンおよび 5 % ホルマリンを 各 100 μl 皮下注射し、無処置群、生理食塩水皮下注射群および 15 % エタノール皮下注射群を対照群とした。1.5、3、6 および 24 時間後に灌流固定し、蛍光顕微鏡を用いて L5 レベルの脊髄後角の二次感覚ニューロンが局在するⅠ層、抑制性介在ニューロンが局在するとされるⅡ・Ⅲ層、視床下部視索上核 (SON)、室傍核小細胞群 (pPVN) および大細胞群 (mPVN) の eGFP 陽性細胞数を計測した。カプサイシン皮下注射群において、1.5 時間後に脊髄後角Ⅰ層、3 時間後に脊髄後角Ⅰ層、SON、pPVN および mPVN、6 時間後に脊髄後角Ⅱ・Ⅲ層で eGFP 陽性細胞数の有意な増加を認めた。また、ホルマリン皮下注射群において、1.5 時間後に脊髄後角Ⅰ層、SON および pPVN、3 時間後に脊髄後角Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ層、SON、pPVN および mPVN、6 時間後に脊髄後角Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ層および pPVN で eGFP 陽性細胞数の有意な増加を認めた。以上より、平成 27 年度 (2 年次) までに、後肢に対する急性疼痛・炎症ストレスにより、二次感覚ニューロンが局在する脊髄後角Ⅰ層、SON、pPVN および mPVNのニューロンの活動性が上昇することと、抑制性介在ニューロンが局在するとされる脊髄後角Ⅱ・Ⅲ層のニューロンの活動性が上昇することをeGFP を指標に可視化・定量化することができた。
3: やや遅れている
平成 27 年度 (2 年次) までに、c-fos-eGFP トランスジェニックラットを用いて、後肢に対する急性疼痛・炎症ストレスにより、二次感覚ニューロンが局在する脊髄後角Ⅰ層、SON、pPVN および mPVNのニューロンの活動性が上昇することと、抑制性介在ニューロンが局在するとされる脊髄後角Ⅱ・Ⅲ層のニューロンの活動性が上昇することを eGFP を指標に可視化・定量化することができた。しかし、研究に使用するトランスジェニックラットの繁殖に時間を要したため、当初計画していた慢性疼痛ストレスモデルや知覚過敏モデルを使用した疼痛ストレスに対する中枢神経系の侵害受容機構の解明には至っていない。
次年度 (平成 28 年度) においては、c-fos-eGFP トランスジェニックラットを用いて、慢性疼痛ストレスモデルや知覚過敏モデルを作成し、疼痛ストレスに対する中枢神経系の侵害受容機構を eGFP を指標に可視化・定量化する予定である。また、c-fos mRNA の発現をin situ ハイブリダイゼーション法を用いて調べることも予定している。本研究の成果は、日本生理学会、日本整形外科学会などの国内学会や国際学会に積極的に発表し、国際専門誌に英文論文として発表する予定である。
試薬等が予定より安価に購入できたため。
次年度 (平成 28 年度) 使用額は、すべて実験用消耗品の購入経費として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件)
Brain Res Bull.
巻: 118 ページ: 7-16
10.1016/j.brainresbull.2015.08.004.