研究課題/領域番号 |
26860165
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
吉本 光佐 奈良女子大学, 生活環境科学系, 助教 (20418784)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 睡眠時無呼吸症候群 / 高血圧 / 動脈圧 / 神経性動脈圧調節 / 腎交感神経 / 腰部交感神経 / ラット / 間歇的低酸素暴露 |
研究実績の概要 |
睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome SAS)は、夜間の睡眠時に見られる呼吸異常である。無呼吸あるいは低酸素呼吸により交感神経活動の亢進が見られるがこの事が高血圧を引き起こす一因と考えられている。しかし、無呼吸あるいは低酸素呼吸時に交感神経活動と動脈圧を同時に数週間にわたり検討した例はない。本研究では、ラットを用いてSASのモデルである間欠的低酸素暴露(intermittent hypoxia IH)を行い、SASで高血圧が発症する時に交感神経活動の動向がどのように血圧調節に影響を及ぼすかを検討する。 【目的】Wistar系ラットを用いて、腎及び腰部交感神経活動測定用の電極(自作)、動脈圧測定のためのテレメトリー血圧測定用送信器(米国DSI社製)を手術により慢性に留置し1週間の術後回復を待った。その後、3日間のコントロール測定の後に、2週間のIH暴露(20回/時, 8時間/日)を行い、その後4日間を回復期とし、連続21日間の測定を行った。IHのプロトコールは、①5%IH:90秒毎に空気(21%酸素,79%窒素)から低酸素(5%酸素,95%窒素)を繰り返した。②3%IH:90秒毎に空気(21%酸素,79%窒素)から低酸素(3%酸素,97%窒素)を繰り返した 【結果】①5%IH暴露時、酸素濃度の低下に伴い、動脈圧、腎交感神経活動、腰部交感神経活動共に増加し、5%IH終了後、元のレベルに戻ることを繰り返した。しかし、動脈圧、腎交感神経活動、腰部交感神経共に21日間のベースレベルは増加しなかった。一方、さらに厳しい低酸素暴露にあたる、②3%IH暴露時に、動脈圧はむしろ低下し、暴露終了後元のレベルに戻った。また、21日間のベースレベルは、変化しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、高血圧発症の神経機序を解明するために、高血圧発症を引き起こすと言われている睡眠時無呼吸症候群(SAS)に着目して、SASのモデルとしてラットに間歇的低酸素暴露を行い、高血圧発症時の交感神経活動の動向を検討している。 <平成26年度の計画> SAS由来の高血圧を引き起こすために、ラットに間欠的低酸素(IH)暴露を、睡眠期である明期に8時間連続して行う。IHの回数は、中等症(15<無呼吸・低酸素回数<30)にあたる20回/時で繰り返す。またSASで低酸素呼吸だけでなく高炭酸ガスになっていることを考慮して、よりSASのモデルに近づけるためにIH+高炭酸ガス暴露をおこなう。 1年目の計画は、上述である。IH暴露時に、動脈圧、腎交感神経活動、腰部交感神経活動はともに繰り返し増加するものの、1日のベースレベルの動脈圧に変化は見られず、高血圧発症に至らなかった。SASでは、実際には気道閉塞が起こっており、全く呼吸が出来ない。そのため、さらに厳しい低酸素暴露として、3%低酸素暴露(3%酸素,97%窒素)を行ったが、やはりベースラインの動血圧の上昇はみられず、高血圧を発症しなかった。繰り返しのIH暴露時に、動脈圧が繰り返し増加するため1日のベースラインの動脈圧も増加し高血圧を発症に至ると考えていたが、高血圧発症には至らず、そのため低酸素の濃度を変えるなどして、対策を講じた。それゆえに、実験計画の遅れとなった。また、申請時には、国立循環器病研究センターに所属していたが1年目の26年度より奈良女子大学に移動した。そのため、スムーズな実験のスタートとはならず、実験が遅れる一因になった。
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今後の研究の推進方策 |
睡眠時無呼吸症候群(SAS)では、実際には気道閉塞が起こっていることから、低酸素だけでなく、高炭酸ガス症になっている。そこで、よりSASのモデルに近づけるためにIH+高炭酸ガス暴露をおこなう。 また、奈良女子大学に移動したため、IH発生装置がなく実験の遅れの一因になっている。そのため、間欠的低酸素暴露だけでなく、実際にラットの気管を閉塞し、SASのモデルにすることを検討する。また、この閉塞モデルの方が、SASのモデルとしてさらに適しており、SASにより高血圧が発症するかどうかを明らかにすることも出来る。また、閉塞モデルとしては、軌道にバルーンを入れて閉塞させる時にそれを膨らますという方法で行う予定であり、すでに技術的に確立しており、研究遂行に問題はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算額が大きくずれた最大の要因は、平成26年度から奈良女子大学に移動したことである。申請書を書いていた時点では、国立循環器病研究センターで実験することを想定して予算を組んで、レーザー組織血液酸素モニター等を購入する予定であったが、奈良女子大学の三木先生が所有のものを使うことができ、購入する必要がなくなった。その代わり、2年目、3年目に予定していた血液成分を分析するための分析装置を始め器具がほとんどない。そのため、予定を変更し化学分析設備に予算を当てる予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
備品の購入がなくなった分、化学分析に使用する薬品等消耗品に相当額が必要となった。次年度は、そちらの薬品や消耗品のチューブやフィルターに相当額が必要である。
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