研究課題
【目的】睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome SAS)は、夜間の睡眠時に見られる呼吸異常である。しかし、無呼吸時に交感神経活動と動脈圧を同時に数週間にわたり検討した例はない。本研究では、睡眠時にラットの気道を閉塞する閉塞性睡眠時無呼吸モデルを行い、睡眠時閉塞性無呼吸時に交感神経活動がどのように血圧調節に影響を及ぼすかを検討した。【方法】Wistar系ラットを用いて、腎及び腰部交感神経活動測定用の電極、脳波、頸部筋電図、横隔膜筋電図、動脈圧測定用のカテーテル(自作)、気管閉塞用バルーン、脳組織酸素飽和度測定用プローブを慢性留置した。睡眠ノンレム期、睡眠レム期、グルーミング期に気管閉塞用バルーンを膨らませ40秒間気管を閉塞した。【結果】40秒間の気管閉塞中、脳酸素組織飽和度と脳波θパワーの低下、横隔膜筋電図と頸部筋電図の上昇、動脈圧の上昇、心拍数の減少がみられた。また腎および腰部交感神経活動の増加は、2段階の反応が見られた。さらに、これらのパラメータの反応には、反応時間の差が見られ、脳波θパワーの低下と腎および腰部交感神経活動の増加が早く、ほぼ同時に起こった。また、間歇的低酸素暴露(IH)+高炭酸ガス暴露を行った結果、経時的に動脈圧の上昇が見られた。このことよりと昨年度IH暴露のみでは動脈圧の経時的増加が見られなかった結果より、低酸素と高炭酸ガスの暴露により高血圧が引き起こされることが明らかとなった。
3: やや遅れている
本研究は、高血圧発症の神経性機序を解明するために、高血圧発症を引き起こすと言われている睡眠時無呼吸症候群(SAS)に注目してSASのモデルとしてラットに間歇的低酸素暴露を行い高血圧発症時の交感神経活動の動向を検討する予定であった。しかし、1年目の検討の結果、間歇的低酸素暴露を繰り返しても、高血圧にならないことが判明し、よりSASのモデルに近いバルーンによる気管閉塞を行った。1年目の遅れや、よりSASに近いモデルへの改良等が遅れる原因となった。
平成27年度に引き続き、ラットで繰り返しの気管閉塞により、高血圧に移行する時に、交感神経活動がどのように動脈圧に影響を及ぼすかの実験のデータ数を増やすとともに、肥満・SASと高血圧の検討を行う予定である。内臓脂肪の蓄積は、SASの増悪因子の一つであと考えられている。そこで、ラットに高脂肪食を与えて、バルーンによる繰り返しの気道閉塞を行い、肥満・SASと高血圧との検討を行う。
初年度に奈良女子大学に異動したことにより、購入を予定していた備品、レイザー組織血液酸素モニター、を使うことができ、購入しなくてもよくなったことがそもそものずれである。また、その分、化学分析に使用する消耗品・試薬に相当額が必要であった。さらに、周波数解析の為のPCおよびソフトを購入予定であったが、現在ソフトを選定中の為、次年度に持ち越しとなった。
周波数解析の為のPCとソフトを購入の予定である。また、化学分析用の薬品や消耗品にも当てる予定である。
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